LNG調達変えるパナマ運河
太平洋と大西洋をつなぐパナマ運河の拡張工事が完了した。これまでに比べて、2倍以上のコンテナを積んだ大型船が通ることができるようになった。
全長80キロメートルの運河は、アジアと米州東岸を結ぶ海上物流の要衝だ。南米から日本へ、中国から北米へ。パナマ運河の拡張が貿易の活性化を促すことに期待したい。
パナマ運河は1914年の開通から1世紀以上の歴史があるが、近年は船舶の大型化に対応しきれなくなっていた。今回、従来の1.5倍の幅を持つ船まで通れる水路を新たに建設した。
拡張は日本にとって重要な意味を持つ。これまで通れなかった液化天然ガス(LNG)の輸送船が航行できるようになるからだ。
米国東岸では各地で、シェールガスを原料に使うLNGの生産計画が進んでいる。日本の電力会社や商社が参加する生産事業も2017年から順次、出荷を始める。
日本は発電燃料や都市ガスの原料に使うLNGの世界最大の輸入国だ。しかし、東南アジアや中東から輸入するLNGは引き取り量や荷揚げする港が変えられないなど制限が多い。米国産のLNGは輸入者が自由に荷揚げ地を選び、余ったLNGの転売もできる。
米国からのLNG輸入を契機に硬直的な取引慣行を変え、調達コストを下げていく必要がある。運河の拡張はエネルギーの調達改革を加速するための条件だ。
米国東岸からアフリカの喜望峰や南米南端を回って日本に運ぶと1カ月以上かかる。パナマ運河を通れば20日超に短縮できる。輸送日数を短くできればコストは下がり、輸送船の回転数も増やせる。
地中海と紅海を結ぶスエズ運河も、行き来する船舶が運河の中ですれ違えるように航路を複線化する工事を終えた。運河の通過時間を短縮し、パナマ運河を意識した通航料の値引きも始めた。
米欧とアジアの間の物流需要取り込みへ、国際航路に欠かせない2つの運河が能力を高め、サービスを競う姿を歓迎したい。
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