円ドル取引半減、19年ぶり低水準 東京市場の上期
投資マネーが不動産など高利回り商品に移る中で、値動きの小さい円・ドルの外国為替取引が落ち込んでいる。東京市場では1~6月の銀行間の直物取引が前年同期に比べ半減し、19年ぶりの低水準となった。利幅が小さいため、個人の外為証拠金(FX)取引も約3割減った。電子取引で先行する英米市場に売買が移っている面もある。取引が細れば経済情勢の変化で相場が乱高下する可能性がある。
日銀が集計した銀行間取引では、1~6月の東京市場での円・ドルの直物取引が1日平均80億ドル(約8100億円)と前年同期比46%減り、1995年以来の低水準だった。7月も1日平均の取引高が先週末時点で56億ドルにとどまり、このままの水準で推移すると7月の取引は95年12月(47億ドル)以来の低さとなる。
2013年は日銀の「量的・質的金融緩和」などで海外のヘッジファンドなどが円売りを膨らませ、13年1~6月の円・ドルの銀行間直物取引は1日平均148億ドルと、80年の統計開始以来、過去最高だった。14年は日銀の追加緩和観測が後退して海外投機筋の円への関心が急低下。相場も1ドル=101~102円台と値動きが小さく、ヘッジファンドなどの投資家は利益を得にくくなっている。
個人のFX取引も減少している。金融先物取引業協会がまとめた店頭FXの上期の取引額は約1000兆円と、前年同期から約3割減った。個人投資家の一部は「新興企業株などの取引に移っている」(ネット証券)という。
円・ドル取引そのものが東京市場からロンドンやニューヨークなどの海外市場に移っている面もある。国際決済銀行(BIS)の調査では、13年4月の円・ドル取引は10年4月に比べ英米では2倍以上増えたものの、東京は8%増にとどまった。
日銀は「ヘッジファンドは欧米やシンガポールを拠点とすることが多く、東京市場のシェア低下につながっている」(金融市場局の菅山靖史企画役)と指摘する。ヘッジファンドは電子取引を増やしているが、システムの多くは米英などの外資系金融機関が提供しており、取引インフラ面でも英米市場が有利になっているという。
足元のように円とドルの為替レートが安定すれば、製造業などにとっては輸出戦略が立てやすくなる利点がある。ただ市場全体の取引が細ると「経済指標などで想定外の材料が出た場合に、想定以上に相場が大きく振れる可能性もある」(みずほ証券の鈴木健吾氏)。為替レートだけでなく取引量の安定も東京市場の課題となりそうだ。