世界の原発40年に60%増 IEA予測、新興国で拡大
【ロンドン=竹内康雄】国際エネルギー機関(IEA)は12日、2014年の世界エネルギー展望を公表した。世界の原子力発電の容量は中国やインドなど新興国で導入が拡大し、13年の392ギガ(ギガは10億)ワットから40年には60%増の624ギガワットになると予測した。先進国を中心に200基以上の原子炉の老朽化が進み、廃炉費用は1000億ドル(約11兆5千億円)以上に膨らむと試算した。
40年までに380ギガワット分の原発が新設され、148ギガワット分が閉鎖される。増加分は大半が新興国で、中国が100ギガワット以上増やすと見込む。発電全体に占める原子力の割合は、現在より1ポイント上昇の12%にとどまる。
40年時点で日本のエネルギー需要は15%を原子力でまかなうと予想。総発電量に占める割合は21%になる見通し。この割合は11年3月の東日本大震災前が26%だったが、その後に原発の稼働停止が相次いだことで12年は2%に落ち込んでいた。
13年末に世界で稼働していた434の原子炉のうち、40年までには200が老朽化する。古い原発は日米欧とロシアに集中する。廃炉にかかる費用は1000億ドル以上にのぼる見通しで、電力会社と規制当局に資金を準備するよう求めた。
原発の寿命に伴い、電力会社は不足する電力を補うため、別の発電手段を用意するか、原発の稼働期間を延長するか、計画を決める必要がある。IEAは各国政府に稼働期間の延長を認める際の手続きの明確化に加え、原発閉鎖に関する規則を整備するよう促した。
世界の原油など化石燃料については、足元では原油価格の下落が続いているものの、IEAは開発の投資の速度を緩めるべきではないと訴えた。世界の石油需要は13年の日量9000万バレルから40年には1億400万バレルに膨らむ見込み。現在は米国やカナダからのシェールガス・オイルの生産が増えて需給を緩めているが、20年半ばまでに生産量は下降するとみる。
需要を満たすには30年ごろまで年間9000億ドルの投資が必要という。とりわけ「資源を持つ中東への投資が重要になる」と強調した。足元で1バレル80ドル前後の原油価格は25年には118ドル、40年には132ドル前後になると予想した。
エネルギー消費に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量は40年に現在より20%増える見通し。このペースだと地球の気温は産業革命前から3.6度上昇し、国際社会が合意した上昇幅である2度を上回る。IEAは「発電部門の脱炭素化が2度目標を達成するカギだ」と各国に対応を求めた。