中国、預金準備率一部下げ 零細企業向け融資後押し
0.5%、一定基準満たした銀行
【重慶=大越匡洋】中国人民銀行(中央銀行)は9日、零細企業や農業向け融資で一定の基準を満たした銀行に限って、16日から預金準備率を0.5%引き下げると発表した。中国政府による景気下支え策の一環。地方経済を支える中堅銀行を中心に貸し出し余力を増やし、零細企業などが直面している資金調達難を和らげるのが狙いだ。
預金準備率を下げるのは、昨年の新規融資のうち零細企業や農業向けの比率が過半といった条件を満たす銀行。零細企業への貸し渋りなどが地方を中心に懸念されていることに対応する。
李克強首相は今春以降、景気を下支えする施策を小刻みに打ち出している。5月末に開いた国務院(政府)常務会議では「金融は実体経済の血液だ」と強調し、零細企業などに融資がより行き渡るように政策を調整する方針を示していた。
人民銀は4月下旬、一部の農村金融機関の預金準備率を下げており、今回は対象を広げた形。一方、不動産投機をあおりかねない全面的な金融緩和にはなお慎重だ。
人民銀は今回の措置について、中堅規模が多い「都市商業銀行」の約3分の2が対象になるなどとしたが、全体からみれば一部にとどまる。中国の預金準備率は金融機関の規模や業態で異なるため、人民銀は今回の引き下げ後の預金準備率の具体的な水準や緩和効果は明らかにしていない。
市場では全体的な預金準備率下げへの期待もくすぶる。人民銀は9日の発表文では「現在、流動性は総じて適度に余裕がある」とし、「金融政策の基本姿勢は変えていない」と強調した。
準備率を下げれば金融機関が融資に回す余力が増え、上げれば金融を引き締める効果がある。中国では金融機関の規模などによって適用される比率が異なる。現在の標準的な預金準備率は大手金融機関で20%、中小金融機関では16.5%。