環境省、水俣病の文書破棄 国の審査会「誤った判断」
熊本県水俣市の女性(故人)の水俣病認定を求めた訴訟で、被告の熊本県側が提出した医師の意見書の原案を環境省が廃棄していたことが27日、分かった。原案はひな型として同省が作成していた。国の審査会は行政文書として保存すべきだったとし、破棄を「誤った判断」と指摘。同省に文書の適切な管理を求めた。
意見書は国立水俣病総合研究センター(熊本県水俣市)の男性医師が「女性を医学的に水俣病だと診断できるだけの根拠に欠ける」と県側の主張を補強する内容で、2010年6月に控訴審で提出された。
医師は意見書について証人尋問で「環境省の担当者が作成した文面を数回修正して完成させた」と証言。原告側は最高裁で原告勝訴が確定した昨年4月、作成課程を問題視し、原案の情報開示を請求したが、環境省は担当者が既に破棄したとして不開示を決めた。
原告側が異議を申し立て、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会が調査したところ、環境省の担当者が保存の必要性がないと判断し原案のファイルやメールの送信記録を削除していたことが判明。審査会は今年3月の答申で、不開示は妥当としたものの、行政文書にあたるかどうかの「判断を誤ったものと言わざるを得ない」とした。
環境省は答申を受け、省内に文書管理の徹底を通知。小林秀幸特殊疾病対策室長は「今後も適正な文書管理に努める」としている。〔共同〕