被害者の3割にPTSD 地下鉄サリン事件20年
1995年3月に起きた地下鉄サリン事件の被害者のうち、約3割に心的外傷後ストレス障害(PTSD)とみられる症状があることが24日、オウム真理教犯罪被害者支援機構(理事長・宇都宮健児弁護士)が実施したアンケート調査で分かった。来月で事件から20年がたつが、同機構は「被害は続いており、健康調査など国の継続的な支援が必要だ」と訴えた。
連絡先が分かる被害者と家族の953人に調査用紙を送り、317人が回答した。
「(事件のことが)いきなり頭に浮かんでくる」「事件にふれようとしない」などの質問をしてPTSDの症状がないか調べたところ、被害者(299人)の29%、家族(17人)の59%にPTSDの可能性があった。
被害者の体調をみると「目が疲れやすい」(76%)と訴える人が多く、「疲れやすい」(63%)、「体がだるい」(57%)という回答も目立った。精神面への影響では「気力がなくなったり、憂鬱な気分になる」(49%)という人が多かった。
現在の心境を問う質問では「事件を風化させたくない」(72%)、「オウムの後続団体に怒りを感じる」(69%)が多かった。「事件の傷を乗り越えたと感じる」(22%)という回答もあった。
東京都内で24日に記者会見した地下鉄サリン事件被害者の会代表世話人の高橋シズヱさん(68)は「まだ治療されていない心や体の問題があると感じた。国は被害者の状況を把握し、支援してほしい」と述べた。
調査に協力した筑波大の松井豊教授(社会心理学)も「心身の後遺症が重くなっている可能性がある。20年たっても苦しみがあることを理解してほしい」と指摘した。
被害者への調査は警察庁も98年と2000年に実施している。
▼地下鉄サリン事件 1995年3月20日午前8時ごろ、東京都内の地下鉄千代田、丸ノ内、日比谷3路線の5電車内で猛毒の化学物質サリンがまかれ、乗客や駅職員ら13人が死亡、6千人以上が負傷した。国内では戦後最悪の無差別テロ事件。首謀した元オウム真理教代表、松本智津夫死刑囚(麻原彰晃、59)ら10人の死刑と4人の無期懲役が確定した。元信者、高橋克也被告(56)の審理が東京地裁で続いている。