踏切遮断、1日10時間がゼロに 西武池袋線「高架」完了
西武池袋線の石神井公園─大泉学園駅間の約1.2kmの上り線が2015年1月25日、高架に切り替わった。同区間の下り線は2013年11月に、既に高架化が完了している。これで1971年に桜台─石神井公園駅間が都市計画決定されて以来、44年間進められてきた、同線の連続立体交差化が完了した。
今回、高架化が完了した石神井公園─大泉学園駅間の約1.2kmは、練馬高野台─大泉学園駅間の約2.4kmを高架化する「西武池袋線(練馬高野台駅─大泉学園駅間)連続立体交差事業」の2期区間。
同事業は、2003年に桜台―練馬高野台駅間の高架複々線化が完成した後の2005年6月に都市計画決定され、2007年5月に事業認可された。事業者は東京都で、立体交差化の事業費は約383億円、複々線化を含む総事業費は約509億円。うち、国と都、練馬区が約306億円、西武鉄道が約203億円を負担している。
2.4kmを2期に分けて施工
工事は練馬高野台駅付近から石神井公園駅のやや西側までの約1.2kmを1期区間、大泉学園駅手前までの約1.2kmを2期区間として行われ、1期区間は2007年8月に着工した。同区間は高架複々線となるため、従来の複線を南側にいったん移設し、空いた空間に高架橋を建設する形で工事が進められた。
まず上り線を2010年2月に高架化し、地上の仮上り線を撤去したスペースに高架を建設して翌年4月に下り線も移設。上下線の高架化が完了し、踏切6カ所を解消した。2012年6月には複々線化が完成し、高架となった石神井公園駅のホームも全面的に使用を開始。それまで練馬高野台駅にあった折り返し線も石神井公園駅に移設され、同月末にはダイヤ改正が行われた。
今回高架化された2期区間約1.2kmは、2011年12月に工事着手した。工区は3つに分けられている。工区名は5つに分かれていた1期区間からの続きで、石神井公園寄りから6工区~8工区となった。
施行したのは6工区(410m)が大林組・前田建設工業・竹中土木・東急建設JV(企業共同体)、7工区(380m)が西武建設・大成建設・戸田建設・大豊建設JV、8工区(440m)が鹿島・熊谷組・鉄建・フジタJVとなっている。
下り線を先に高架化
2期区間の工事は、まず従来の線路の北側に用地を確保して上下線を移設。もともと線路があった場所に1線分の高架橋を建設して下り線を高架に切り替えたのち、旧下り線があった空間に高架を設け、上り線を切り替えるという形で進められた。
上下線の仮線への移設は2012年10月に完了し、翌2013年11月24日には下り線を高架化。そして2015年1月25日、上り線を高架化し、全区間の高架化が完了した。
2期区間には、大泉学園側から練馬区道と交差する「石神井公園第8号」、都道下石神井大泉線(444号)と交差する「石神井公園第5号」、自動車の通行できない住宅街の中の「石神井公園第4号」の3つの踏切があったが、高架化によってこれらが全て解消された。
一晩で消えた3つの踏切
上り線の高架切り替え工事は、1月24日の終電後から25日の始発電車までのわずかな時間に実施された。3カ所の踏切にあった警報機などは全て撤去され、線路はフェンスで塞がれた。道路上の停止線も消されているが、線路が残っているのが見えるためか、切り替え初日は徐行や一時停止する車も見られた。
東京都と西武鉄道の発表によると、高架化前は3カ所の踏切の平均遮断時間が1日10.5時間にも及んでおり、石神井公園第5号踏切の遮断による渋滞は最大で220mに達していた。だが、下り線の高架化後は遮断時間が4割減ったことで、渋滞長も約4割減の130mまで縮小したという。今回の高架化完了により、踏切での渋滞は完全に解消されることになる。
高架化直後の現在はまだ旧上り線の線路が残った状態だが、今後は側道の整備に向けて撤去作業が行われる。西武鉄道によると、線路の撤去は2014年度内に終了する予定だ。
東京都建設局によると、側道は2016年度内に完成の予定。線路の撤去後にまず下水道などライフラインの工事を行い、その後道路を整備していく。側道は幅6~10mで「練馬高野台─石神井公園駅間の高架沿いの道路と同じようなイメージ」という。
高架化、44年の軌跡
西武池袋線の連続立体交差化の歴史は、1971年1月に桜台─石神井公園駅間の高架複々線化が都市計画決定されたことに始まる。
このうち最も早く完成したのは、練馬区を縦断する笹目通りの踏切解消が急務だった、現在の練馬高野台駅付近(富士見台─石神井公園駅間)の約1.6km。1987年12月に高架化された。当時は両駅間にまだ駅はなかったが、7年後の1994年12月には複々線化とともに練馬高野台駅が開業した。
次いで1990年10月に桜台─練馬駅間約2.1kmの工事が開始され、同区間は1997年8月に高架化が完成。練馬─富士見台駅間も1994年3月に工事に着手し、まず中村橋─富士見台駅間が1997年12月に完成した。
残る練馬─中村橋駅間の高架化が完成したのは2001年3月だが、この区間の工事で注目されたのは、両駅のほぼ中間地点を横切る目白通りの「逆立体化」だ。もともと道路が線路をまたぐ形で立体交差化されていたため、線路の高架化に合わせて道路を地上に下ろし、交差形態を逆転させる大工事が2001年3月3日深夜から翌4日朝にかけて行われた。
この区間の完成によって桜台─練馬高野台駅間の高架化が完了し、踏切計19カ所を解消。複々線化も2003年3月に練馬─富士見台駅間が完成し、この時点で桜台─練馬高野台駅間の高架複々線化が完了した。
今回の練馬高野台─大泉学園駅間の高架化完了によって、西武池袋線は桜台─大泉学園駅間の7.6kmが高架線となり、同区間にあった計28カ所の踏切が解消された。都市計画決定から44年、最初の区間が高架化されてから28年。練馬区を東西に横断する大動脈は新たな時代を迎えた。
(RailPlanet 小佐野カゲトシ)
[ケンプラッツ2015年1月28日付記事を基に再構成]