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原発事故で再注目 小水力発電、国内外で市場拡大

編集委員 安西巧

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東京電力福島第1原子力発電所事故をきっかけに電力改革の機運が高まって3年余り。再生可能エネルギーに注目が集まる中で小水力発電を巡る動きが加速している。2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)によって売電価格が高値安定したことから農業用水や工業用水、上下水道などへの小水力発電設備の需要が急増。大手メーカーだけでなく、地方の中小メーカーも水車や発電機などの開発に力を入れ始めたほか、水力関連分野でのM&A(合併・買収)も目立ってきた。9月以降相次いでいる九州電力などの再生エネ受け入れ中断は懸念材料だが、国内だけでなく、東南アジアなど海外での小水力発電のプロジェクト受注を狙う企業も相次ぎ、各社は内外での市場拡大を視野に入れている。

東北で進む開発

今年8月、東北の中堅・中小メーカー2社が発電効率の高い小水力発電向け水車を共同開発すると発表した。芦野工業(山形市、鈴木末三社長)と東北小水力発電(秋田市、和久礼次郎社長)で、国内の水力発電施設の約7割で採用されているフランシス水車の羽根の形状改良に取り組む。

19世紀半ばに米国人技術者ジェームズ・B・フランシスが発明したとされる同水車は「ランナー」と呼ばれる羽根車を水流で回す仕組みで、多様な水路の落差や流量に対応できるのが特長だ。東北小水力が得意な流体解析技術を活用して最適な羽根の形状を設計し、水力発電機器製造で実績のある芦野工業が試作機の製造や実証実験を手がける。両社が狙うのは出力1万キロワット未満の小水力発電市場だ。

フランシス水車では水流のエネルギーを電力に変える発電効率が高いもので91%程度とされる。芦野工業の鈴木社長は「小水力発電は設備の設置場所によって発電効率は大きく変わるが、開発が計画通りに進めば既存製品より4ポイント程度の改善は見込める」と説明する。東北小水力の和久社長は「最高95%という発電効率向上の目標を達成できれば大手メーカーと同じレベルで対抗できる」と期待を膨らませる。両社は17年3月までの商品化を目指し、完成後はそれぞれのブランドで販売する計画だ。価格は従来品と同程度の2億円(設備一式)としたい考えで、両社ともに5年後に年間10台、販売額20億円を見込んでいる。

国内の水力発電機器市場は出力3万~10万キロワット規模の大型発電所では東芝や日立製作所、三菱電機、三菱重工業をはじめ、富士電機と水力発電機器世界最大手の独フォイトハイドロ社が1997年に折半出資で設立した富士・フォイトハイドロ(川崎市)といった大手メーカーがしのぎを削る。小水力分野では田中水力(相模原市)、イームル工業(広島県東広島市)などの中堅メーカーが存在感を示している。

大型水力、立地案件乏しく

ただ、国内ではすでに大規模ダムが各地で稼働し、大型水力発電所の新規立地案件は乏しい。一方で福島第1原発事故後の電力不足やFITの施行により小水力の新規プロジェクトが全国的に広がってきたため、最近では大手メーカーが小水力分野の強化に動いている。

富士・フォイトは福島第1原発事故から3カ月後の11年6月に荏原の水力発電設備事業を買収した。荏原の同事業は小規模設備を得意としており、国内で150カ所以上の水力発電所への納入実績があった。旧三井鉱山から分離独立した産業機械メーカーの三井三池製作所(東京・中央)は昨年、小水力発電機器事業に参入した。土木建設機械や流体機械の製造で蓄積した技術を活用した高効率の水車をはじめ、発電機や制御装置などを手がけ、今年6月には高知県馬路村の小水力発電用水車の製造・据え付け工事を受注している。

重電メーカーの明電舎は今年7月、イームル工業への出資を拡大して筆頭株主となり、水力発電事業を拡大する姿勢を鮮明にした。イームル工業は戦前の広島電気(中国電力の前身)で水力発電を手がけていた織田史郎氏が47年に設立。織田氏は戦後の復興期に小水力の自家発電機を自治体や農業協同組合を通じて「無灯火地区」(電力会社の電線が引かれていなかった農山村)の河川への設置を進め、一時は全国で200カ所以上、中国地方だけでも86カ所の小水力発電施設が誕生した。だが戦後の電力再編で51年に発送電一体・地域独占の9社体制が確立すると「無灯火地区」は減少の一途をたどり、保守費用のかさむ小水力は競争力を失っていった。織田氏の古巣の中国電力は比較的高額で小水力の電力買い取りを続けたため、中国地方では現在でも50カ所以上の小水力施設が残っている。

こうした経緯もあり、中国電力はイームル工業に約18%出資する筆頭株主となっていたが、ここに来て2位株主だった明電舎が出資比率を約16%から33%に引き上げた。実はこうした明電舎の動きは国内だけでなく、海外戦略の布石でもある。今年5月、明電舎は水力発電の海外案件としては13年ぶりにラオスでの小水力発電用水車と発電機を受注した。ダムなどの大型設備が不要で10億~30億円で建設可能な小水力発電設備はインドネシアやフィリピンをはじめとする東南アジアを中心に需要が拡大しているが、明電舎は水車の主要調達先だった荏原が同事業を富士・フォイトに売却して撤退したため、内外の水力発電プラント受注でパートナーとなる企業を求めていた。そんな明電舎にとって、設備の製造から販売、保守まで日本唯一の水力発電設備の専門メーカーといわれるイームル工業は格好の相手だったといえる。

東電系や丸紅、参入相次ぐ

東京電力系の電力卸会社、東京発電(東京・台東)が上下水道などを利用した小水力発電所を5年後をメドに現在の2倍の20カ所に増やす。

JX日鉱日石エネルギー系の石油卸会社、Misumiが小水力発電事業に参入し、主に九州全域で約10年間に30~40カ所の発電所を建設する。

丸紅は国内の小水力発電所を20年までに現在の4倍となる30カ所に拡大する。

今年に入り小水力発電所の新増設計画を伝えるこうした産業ニュースが相次いでいる。9月以降、九州電力をはじめ大手電力が再生可能エネルギーによる発電が供給過剰となり、送電網の容量を超えて大規模停電を起こす恐れがあるとして太陽光など再生エネ電力の買い取りを中断する動きが広がっているが、ある発電機器メーカー幹部は「小水力は太陽光や風力と違って時間や天気に左右されず、安定した電力を供給できる。再生エネは発電量が不安定で対応が難しいという大手電力の言い訳は通用しないはず」と主張する。

経済産業省は今更のように有識者会議を設けて対応策の検討を始めるとしているが、FIT施行後の電力需給バランスの問題は先進地域である欧州各国でも実例があり、国内での2年前からの申請ラッシュを見ているだけでも予見不可能だったとは言い難い。

安倍晋三政権は九州電力川内原子力発電所(鹿児島県)の再稼働を進める姿勢を崩していないが、それでも9月29日の臨時国会での所信表明演説で首相は「徹底した省エネルギーと再生可能エネルギーの最大限の導入により、できる限り原発依存度を低減させる」と訴えた。世論調査で原発再稼働への反対が半数を超えているだけでなく、再生エネの活用拡大に道を開く電力システム改革がアベノミクスの第3の矢である成長戦略の柱の一つであるからだ。小水力発電はプラント輸出も広がりつつあり、国内では農業などと絡めた地域おこしの動きにもつながる。ブームはむしろ、これからなのかもしれない。

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