イラク地上戦、米関与も 軍高官「顧問団が同行」
【ワシントン=吉野直也】米制服組のトップ、デンプシー統合参謀本部議長は16日の米議会証言で、過激派「イスラム国」掃討でイラクでの地上戦に米軍事顧問団が関与する可能性を示唆した。ヘーゲル米国防長官はシリア領のイスラム国の空爆を既に承認したと明らかにした。イスラム国に対抗する「有志連合」づくりはイラクで実績を作り、シリアでの展開につなげる2段階を描く。
「軍事顧問団がイラク軍に同行してイスラム国の拠点を攻撃すべきだと考えれば、それをオバマ大統領に提言する」。デンプシー氏は16日の米議会証言で指摘した。発言は、イスラム国の支配地域をイラク軍が奪還する場合に顧問団を帯同するシナリオが念頭にある。
オバマ氏は地上部隊派遣を否定しており、顧問団とはいえ、デンプシー氏の発言は波紋を広げそうだ。デンプシー氏はイスラム国との戦いは2003年に開戦したイラク戦争とは違い「波状攻撃だけでは済まない」と語り、長期戦になるとの見通しを示した。
ヘーゲル氏は同証言でシリア空爆を含む軍事行動を承認し、17日にフロリダ州の米中央軍司令部を訪れるオバマ氏に説明すると語った。さらに「イスラム国を野放しにすれば、米国と同盟国の本土への直接の脅威になるだろう」と述べ、有志連合づくりの必要性を強調した。
一方、米英ロやアラブ諸国など約30の国と国際機関は15日のパリでの外相会合でイラク政府への軍事支援を申し合わせた。シリア領のイスラム国への空爆拡大にはロシアが反対し、合意できなかった。
オランド仏大統領はパリの会議で「地球規模の対策が必要だ」と国際社会の団結を求めた。仏軍は米軍に協力し、イラクでの偵察飛行を開始した。パリの会議ではイスラム国の資金源の遮断方法も議論になり、近くバーレーンで国際会議を開くと決めた。
今回のパリの会議などで浮かび上がったのは、政府が支援を要請するイラクでは有志連合づくりが進めやすい点だ。シリア領の空爆では、アサド政権を軍事的に支えるロシアやイランも反対で足並みをそろえる。
そこで米国はまずイラクへの軍事支援で有志連合の実績を作り、その次にシリア領での掃討につなげる構想を想定する。米中央軍は14、15両日にイラクの首都バグダッド近郊でイスラム国の拠点を空爆し、活動範囲をさらに広げた。
米国が有志連合づくりの正念場になるとみるのが16日にニューヨークで開幕する国連総会だ。米側はケリー国務長官を議長にイラク支援に関する安全保障理事会の閣僚級会合を19日に開催する。オバマ氏が24日に主宰する首脳級会合に先立ち、有志連合づくりを加速させる。