野菜くずがお宝に 栄養満載のだし「ベジブロス」
必要なのは、両手いっぱいの野菜くずに酒と水だけ。弱火で煮出せば、野菜のくずは次第に栄養満点の「お宝スープ」に姿を変える。この野菜から取るだしの「ベジブロス」には、「ファイトケミカル」という機能成分が満載なのだ。
「抗酸化作用があり免疫力を向上させる効果もあるとされるファイトケミカルには、近年注目が高まっています」(順天堂大学大学院教授の白澤卓二さん)
野菜の細胞内にあるファイトケミカルは加熱によって細胞外へ溶け出す性質がある。ベジブロスなら、生野菜ジュースよりも効率的に摂取できるのもメリットだ。
「皮やヘタ、種など、食べられないと捨てていた部分に、実は野菜の栄養が凝縮されています」(白澤さん)
皮は土の中の害虫や細菌、紫外線から身を守るために、種やヘタはこれから成長するために、栄養が詰まっているのだ。「従来、くずとされてきた部分にこそ野菜の底力があるのです」(白澤さん)。
さまざまな野菜の、あらゆる部位を「ベジブロス」に変身させることで、野菜の栄養を余すところなくいただこう。
ベジブロスのここがすごい
(1)料理のおいしさを引き立てる「だし」として活躍
魚や肉から煮出すパンチのあるだしではなく、野菜ならではの甘みや風味が染み出した、まろやかな味わいが特徴。和食でも洋食でもどんな料理にも使え、味に深みが出る。
(2)野菜を有効活用できる
ベジブロスの材料は、野菜の皮やヘタ、根元といったいつもは捨てている野菜の「くず」。ベジブロスによって野菜をほぼ丸ごと活用できるため、無駄をなくすことができる。
(3)免疫力がアップ
ベジブロスのだしに含まれる植物由来の成分「ファイトケミカル」には、免疫細胞の働きを高める作用がある。スープだから、体が成分を吸収しやすいのも利点だ。
(4)抗酸化力がアップ
強力な抗酸化力を持つといわれるファイトケミカルは、人の体を老化させる最大の要因、活性酸素の働きを抑えてくれる。老化のブロックにも一役買うのだ。
(5)抗がん作用も期待できる
「ベジブロスのファイトケミカルには、ビタミンやミネラルだけでは補い切れない強力な抗がん作用がある」(白澤さん)。細胞のがん化を防ぎ、増殖を抑える効果も見込まれる。
野菜くずを両手いっぱい分 ベジブロスの材料
どの家庭でも出る「野菜のくず」がベジブロスの主な材料だ。複数の種類を入れるほど、おいしく仕上がる。
ベジブロスは、材料となる野菜を選ばない。ただし、最低限5種類以上の野菜のくずを使うようにしたい。それぞれの野菜が持つうまみの相乗効果で、よりおいしく仕上がるからだ。
「香りが良くなるセロリやパセリ、味・色共に良くなる玉ネギの皮はぜひ入れたい野菜。これらをベースに、多くの種類の野菜を入れるほどおいしくなります。栄養価の高い旬の野菜を使うのがお勧めです」(料理家のタカコ ナカムラさん)。
なお、キャベツやブロッコリーなどアブラナ科の野菜は独特の風味が出る。入れ過ぎないないように気を付けたい。
「煮る→こす」の4ステップで完成 ベジブロスの作り方
野菜のくずを20分間ほどコトコトと煮込んでこすだけ。容易に、野菜の栄養が溶け込んだ黄金色のだしが完成する。
※材料(1リットル分)。野菜の切れ端…両手いっぱい分。水…1300ml。料理酒…小さじ1
この人に聞きました
料理家。アメリカ遊学中にホールフードの理念に出合い、「ホールフード協会」代表理事に。1998年、野菜で煮出すだしを「ベジブロス」と命名。食と暮らしと環境を学ぶ「タカコ ナカムラ ホールフードスクール」主宰。著書に『ベジブロス』(パンローリング)など。
(ライター 宇治有美子 写真 土居麻紀子)
[日経おとなのOFF 2014年12月号の記事を基に再構成]