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スポーツを科学する 高速パスサッカー向き? W杯公式球「ブラズーカ」

編集委員 鉄村和之

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サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会は、6月12日(日本時間13日)の開幕までいよいよ50日を切った。この大会で使用される公式球はアディダスの「ブラズーカ」だ。前回の2010年南アフリカ大会で使用された「ジャブラニ」はボールの変化が予測しにくくGK泣かせともいわれたが、今回の「ブラズーカ」にはどんな特徴があるのだろうか。筑波大大学院人間総合科学研究科の浅井武教授は「高速パスサッカーに向いている」と分析している。

6枚のパネル組み合わせ作る

今でも鮮明に覚えている人も多いだろう。4年前の南ア大会の1次リーグ第3戦。岡田監督率いる日本は、世界を驚かせた衝撃的なFK2発などでデンマークを3-1で下し、決勝トーナメント進出を決めた。

1本目の先制点が本田の無回転キック、2本目の追加点は遠藤がインサイドで回転をつけてカーブをかけたキック。本田の無回転キックはGKが一瞬逆方向に動いた後、急激に沈み込みながら曲がってゴール左隅に吸い込まれた。翌日のデンマーク紙は「(GKにとって)悪魔のゴール」と伝えたという。

本田、遠藤のスーパーゴールを生んだのがアディダスのジャブラニで、球体を形作るパネルの数を8枚にまで減らし、「より真球に近づけた」といわれるボールだった。

かつてサッカーボールといえば五角形12枚、六角形20枚の計32枚のパネルを組み合わせたものが主流。天然皮革から人工皮革へという素材の変化はあったものの、W杯では1970年代の大会から2002年大会までこのタイプのボールが使われてきた。

だが、06年のドイツ大会で、アディダスがパネルの数を14枚に減らした「+チームガイスト」を開発。南ア大会では、さらに6枚減らして8枚にしたジャブラニを登場させた。

今回のブラジル大会用のブラズーカは、ジャブラニよりさらに少ない6枚のパネルを組み合わせて作られている。スペインのバルセロナで活躍するメッシ、レアル・マドリードのGKカシリャスらが開発に参加したといい、アディダスによると、テストに参加した香川は「思った通りの軌道で飛ぶので、パスやシュートの感覚が良かった」とコメントしているそうだ。

パネルの形状やそれに伴って生じる縫い目などが、キックしたときのボールの軌道などに影響を与えることは一般的に知られている。W杯の公式球としては過去最小の6枚パネルで作られたブラズーカはどんな特徴があるのだろうか。

中速領域でボールが伸びる印象も

パネルの数が6枚に減ったことで縫い目の長さも短くなったと想像しがちだが、実際には逆。浅井教授が調べたところ、ジャブラニが1.98メートルほどだったのに対し、ブラズーカは3.32メートルほどあった。32枚のボールよりは縫い目が短いものの、「ボールの性質はやや32枚のころにカムバックしている」と同教授は話す。

具体的な特徴を調べるため、ボールの前方から風を当てて空気抵抗の変化を計測する風洞実験をしたところ、次のようなことが分かったという。

ブラズーカの空気抵抗は秒速15メートルから22メートルの中速領域でジャブラニの空気抵抗を下回っていた。とりわけ秒速15メートル付近でブラズーカの空気抵抗(0.2以下)は、ジャブラニ(0.5程度)を大きく下回った。

一方、秒速22メートルから35メートルの高速領域ではブラズーカの方がジャブラニより空気抵抗が大きかったが、秒速20メートル台の後半より速いスピードではそれほど大きな差はなかった。

これはどういうことを意味するのだろうか。サッカーにおいて、強烈なシュートは秒速30メートル程度の速さを持つ。試算によると、初速30メートルで20メートル離れたゴールに向かって10度の上向きの角度でシュートした場合、ブラズーカはジャブラニより約0.01秒後れてゴールに到達し、ボールのスピードはジャブラニより約3%遅くなる。浅井教授は「この程度なら、選手にはそれほど大きな差とは感じないのではないか」と指摘する。

しかし、秒速20メートルで20メートル離れたゴールにシュートしたとすると、ブラズーカはジャブラニよりも約0.09秒速くゴールに到達し、ボールのスピードもジャブラニより10%以上速くなる。同教授は「選手たちにとってブラズーカは中速領域でボールが伸びるような印象を受けるかもしれない」と推測する。

この秒速20メートル程度というのが、高速パスと同じくらいのスピード。つまり、中速領域で空気抵抗が小さくボールのスピードが落ちにくいブラズーカは、「アップテンポでパスを回すのに比較的適している」というのが浅井教授の結論だ。

不規則なブレ、小さくなる傾向に

世界でこうした高速パスサッカーを展開するチームといえば、真っ先にスペインが思い浮かぶ。前回の南ア大会ではシャビ、イニエスタらを中心に華麗なパス回しを披露し、W杯初優勝を飾った。ボールだけを考えれば、ブラズーカは連覇を目指すスペインのサッカーに合っているといえるだろう。

ザッケローニ監督が率いる日本代表にとって、このボールはどうか。「ザックジャパンも持ち味はパスサッカー。だから決して不利なボールではなく、基本的には向いているボールだと思う」と同教授は話す。

前回の南ア大会ではボールが不規則に変化する、いわゆる"ブレ球"によって、GKが何でもないようなボールをキャッチし損なったり、逆をつかれたりする場面が相次いだ。イングランドのGKグリーンが米国戦で真正面に来たシュートを後逸する、まさかのミスで1-1の同点にされてしまったシーンなどはその象徴だった。優勝したスペインのGKカシリャスも「ビーチボールのよう」と評したそうで、各国のGKはジャブラニへの対応に頭を悩ませた。

今回のブラズーカはどうだろうか。浅井教授が無回転状態での揚力の大きさや変動する大きさを調べたところ、ブラズーカの方がジャブラニよりも揚力の変動幅が小さかった(図のように、ブラズーカの方が中心部に線が集まっていることから変動幅が小さいことが分かる)。

このことはブラズーカの方が無回転状態で比較的安定した軌道でボールが飛んでいくことを示していて、「不規則なブレはジャブラニよりも小さくなる傾向があるのではないか」と浅井教授は推測する。南ア大会はボールに弄ばれて冷や汗をかいたGKたちも、今回は比較的落ち着いて対応できるようになるかもしれない。

また、南ア大会ではストライカーたちが放つシュートが予想外に伸びすぎてゴールポストのはるか上方を越えてしまうシーンも目立った。これは試合会場が高地だったことも影響していると考えられるが、今大会のブラズーカは選手の思い描いたような軌道で比較的飛んでいってくれそうだ。

Jリーグ、今季の試合球に採用

ただ、先に記したようにブラズーカはジャブラニよりも縫い目の長さが上回っており、それに伴ってボールの表面の凹凸も多くつくことから、「ボールに回転をかけた場合はジャブラニよりもブラズーカの方が大きく変化するかもしれない」と浅井教授は分析する。

まずはボールに慣れることが重要で、Jリーグでは今季、このブラズーカを試合球として採用した。10年シーズンでもJリーグはジャブラニを採用し、南ア大会で決勝トーナメント(16強)に進出した岡田ジャパンの大きなアドバンテージとなった。今回も国内にいる選手たちはある程度の感触をつかんで本大会に臨めそうだ。

過去の大会で様々なドラマを生んできた公式球。今回のブラジル大会で、ブラズーカはどのような演出をするのだろうか。

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