洋上風力コスト、25年メド火力並みに シーメンスなど見通し
【ロンドン=加藤貴行】独シーメンスや米ゼネラル・エレクトリック(GE)、欧州の電力大手など11社は6日、2025年までに欧州の洋上風力発電の発電コストが従来型の火力発電並みに低下するとの見通しを発表した。欧州は遠浅の好適地が多く、世界の洋上風力の9割以上が集まる。各社は欧州の各国政府に当座の補助の必要性を訴えながら、欧州発の二酸化炭素(CO2)排出削減の切り札として競争力を高めたい考えだ。
各社は共同声明で、技術革新などによるコスト削減により、25年までに系統接続の費用も含む1千キロワット時あたりの価格が80ユーロ(約9800円)以下になると強調した。現在から4割程度下がる計算で、石炭や天然ガスを燃料とする火力発電にも互角になるという。
欧州では立地によっては陸上風力が火力発電並みにコストが下がったが、洋上風力はまだ割高。北海などの好適地を持つ英国やドイツなどの政府は近年、再生エネのなかでも安定して大量の電力を生み出せる洋上風力を手厚く補助してきた。
各社はコスト削減の道標を示し、各国の支援策を維持・拡充するよう求めた形だ。声明には、三菱重工業の洋上風力発電機合弁会社、MHIヴェスタス(デンマーク)のほか、独エーオンや独RWE、イベルドローラ(スペイン)、バッテンフォール(スウェーデン)といった電力大手も名を連ねた。
欧州風力エネルギー協会(EWEA)によると、15年末時点の域内の洋上風力の設備容量は約1100万キロワットと、原子力発電所11基分に相当する。建設中が190万キロワットにのぼり、今後10年で累計2640万キロワットまで拡大する可能性がある。
欧州連合(EU)は30年までに1990年比でCO2排出量を40%減らし、電源に占める再生可能エネルギーの比率を27%以上にする計画だ。欧州では産業政策の面でも、域内に関連産業が集まる洋上風力の期待が高い。
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