規制委、廃炉時の廃棄物処分で基準策定へ
原子力規制委員会は、原子力発電所を廃炉・解体する際に出る放射性廃棄物を安全に処分するための規制基準づくりに着手する。原子炉中心部にある部品は放射線量が高いため、深い地中に埋めて長期間にわたる管理が必要だが、施設や管理方法の詳しい基準が決まっていない。今後は老朽原発の廃炉が本格化するとみられ、制度整備を急ぐ必要があると判断した。
規制委の田中俊一委員長が1日の定例会合で「廃棄物の規則は早急に整備していく必要がある」と述べ、事務局の原子力規制庁に基準策定を急ぐよう指示した。9月に規制委員に着任した日本原子力学会元会長の田中知氏が放射性廃棄物を専門としており、田中知氏を中心に検討を進める。
原発解体で出る放射性廃棄物には、大きく3種類ある。最も放射線レベルが低い解体コンクリートなどは地面にトレンチ(溝)を掘ってそのまま埋める。やや放射線が高い廃液や消耗品の場合はコンクリート製のピット(箱)にとじ込める。規制委は、この2種類の基準はすでに策定済み。
問題になるのは原子炉内の部品などだ。原発解体で出る廃棄物の中で最も放射線レベルが高く、50メートルよりも深い地中にコンクリート製の建造物をつくり、数百年にわたる管理が必要になるとされる。規制委はこれまで、こうした廃棄物の基準づくりを先送りしてきた。
国内では、日本原子力発電の東海原発(茨城県)や中部電力の浜岡原発1、2号機(静岡県)などで廃炉作業が始まっている。昨年7月からは原発の運転期間を原則40年に制限する制度が導入、関西電力なども老朽原発を廃炉にする検討を始めた。原発の解体が進んでも、廃棄物処分の基準が未整備だと廃炉作業が途中で止まってしまう可能性があると判断した。
こうした原発の解体廃棄物とは別に、使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物や、福島第1原発の解体で出る溶融燃料(デブリ)などの処分方法の基準もまだ定まっていない。今後の中長期的な課題になりそうだ。