川内原発を優先審査 規制委、今夏にも再稼働
原子力規制委員会は13日、再稼働に向け審査中の10原発のうち、九州電力川内(せんだい)原子力発電所(鹿児島県)の安全審査を優先的に進めることを決めた。規制委は今後、同原発について審査の最終とりまとめに入る。早ければ5月にも審査に合格する可能性がある。昨年7月に刷新された新規制基準の下、川内原発が夏にも再稼働1号となる公算が大きくなった。
「優先枠」に選ばれたのは川内原発の1、2号機。合計出力178万キロワットで九電の主力発電所のひとつだ。田中俊一規制委員長は同日の規制委の会合で「川内原発1、2号機は基本的には大きな審査項目をクリアしている」と語った。規制委は今後、川内を「特急」扱いとして審査を進める。九電は「審査に対して真摯かつ精力的に対応したい」とのコメントを出した。
積み残している主な作業は、原発の基準適合状況を詳細に示す「審査書」づくりと、一般からの意見募集や公聴会の実施など。すべての作業を終えるまでには少なくとも2カ月程度かかる見込み。
規制委による審査合格後は、周辺自治体などの同意を取り付けられるかどうかがカギとなる。川内原発周辺では大きな反対はないとみられている。薩摩川内市の岩切秀雄市長は13日、「大きな山を一つクリアできたと考えている」との談話を発表した。
東京電力福島第1原発の事故を教訓に原発の規制は刷新された。審査のポイントとなっているのは原発を襲う地震や津波への対策だ。新規制基準は各電力会社に対し地震・津波のリスクを厳しく見積もるよう求めた。川内原発は事故前に想定していた地震・津波想定を見直して大幅に引き上げ、安全対策を強化したことで12日までの審査で主要項目をほぼクリアした。
新規制基準が昨年7月に導入されて以降、規制委はこれまでに10原発17基の審査申請を受け付けた。ただ10原発同時進行の審査は遅れがち。電力会社や原発地元からは審査の早期終了を求める声が上がっていた。このため規制委は先行する原発の審査を優先的に進めて終わらせ、この審査をモデルケースとして他原発の審査を効率的に済ませる意向を示していた。
残りの9原発では四国電力の伊方原発(愛媛県)、九電玄海原発(佐賀県)などの審査が進んでいる。川内原発が優先審査を受ける期間は、他原発の審査は多少滞る可能性がある。また、他原発では稼働に難色を示している周辺自治体もあり、審査合格後も再稼働にこぎ着けられない可能性は残る。
政府は規制委の安全審査を合格した原発から再稼働する方針を示している。原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政権が、自治体や国民の説得にどこまで関与するかも再稼働を左右する焦点となる。川内原発以外で、電力需給が逼迫する夏までに再稼働の見通しが立つか、先行きは不透明だ。
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