超高層の地震動抑える巨大振り子、鹿島が実物大実験
超高層ビル屋上に設置する300トン(t)の巨大な振り子はどう動くのか――。鹿島と三井不動産は2014年3月4日、東京都新宿区の新宿三井ビルディングに導入する超大型制振装置(TMD)の実物大実験を公開した。6月まで性能試験を実施し、7月に設置工事に着手する予定だ。
新宿三井ビルディングは1974年9月竣工。地下3階・地上55階建て、高さ210mの超高層ビルだ。2013年8月に長周期地震動対策工事に着手。今後、両社が共同開発したTMD「D3SKY」(ディースカイ、Dual-direction Dynamic Damper of Simple Kajima stYle)6基、計1800tを屋上に設置する工事などを進める計画だ。総工事費は約50億円。
TMDは1基当たり、鉄骨の主架構から300tの鋼製の重りを8本の鋼製ワイヤーで吊るす構造。重りの下部に水平のオイルダンパーを4台取り付ける。重りの最大振幅は水平方向に約2メートルで、自由に動けるようにする。
プラス・マイナス2メートルの可動範囲がある新開発のオイルダンパーは、重りをスムーズに減速させ、過大な変形や損傷を防ぐ役目を果たす。直下型地震の際にワイヤーに不利な力がかからないように、鉛直方向にもダンパーを設置する。
重りを吊り下げるワイヤーの長さは8メートル。ビルの周期に併せて周期5.7秒で動くようにした。狭いスペースで自由に重りが動くよう、4台の水平ダンパーを平面的には放射状に、立面的には段差を設けて配置し、変形したときに互いが干渉しないように工夫した。
「計算通りの動き」を確認
性能試験では、水平ダンパー4台を設置した状態で計算通りに動くかどうかを確認した。油圧ジャッキを使って一方向に振れ幅190センチメートルまで重りを引っ張って放したときの動きを検証した。これは、3連動の南海トラフ巨大地震を想定した変位量に相当する。
開発にかかわった鹿島建築設計本部構造設計統括グループの栗野治彦グループリーダーは、「非常に滑らかに、計算通りの動きをしている。実際のデータから、建物の設計に使ったときのTMDの計算上の理論値と対応した正確な挙動を確認できた」と話す。
新開発のオイルダンパーは、最長10メートルにもなる巨大なもので、工場で試験ができない。実大モックアップによる性能試験は、ダンパーの受け入れ検査も兼ねている。
6月まで試験を続け、全24台のオイルダンパーの性能試験や、ワイヤーのクリープ試験を実施する。検査が終わったダンパーは随時、新宿三井ビルディングに搬入。2014年7月にTMDの設置工事を始め、2015年2月に完了する予定だ。同年4月末の工事完成を目指す。
(日経アーキテクチュア 佐々木大輔)
[ケンプラッツ 2014年3月10日掲載]