春秋
「24時間戦うのはしんどい」。いまテレビで流れているCMソングの一節だ。どこかとぼけた女性の声に重なるように、画面には「3、4時間戦えますか?」とのキャッチコピーが映る。宣伝している商品は「リゲイン エナジードリンク」という缶入りの炭酸飲料だ。
▼リゲインといえば1980年代末のバブル時代、「24時間戦えますか、ビジネスマン」と鼓舞するCMが一世を風靡した。24時間から3、4時間へ。「時代は移り変わり、労働時間は短縮傾向。仕事にも効率が求められる」。そんな背景を考えた結果、メロディーはそのままに歌詞だけ変えたCMソングを制作したそうだ。
▼「エナジードリンク」とは、年配の方々には聞き慣れない言葉かもしれない。飲むと元気になるイメージで売る飲み物で、栄養ドリンクと異なりおおむね缶入り。市場規模はこの3年で5倍に膨らんだ。「運動前、仕事前、夜遊び前に、自分を鼓舞するため10代後半から30代の男性が主に飲む」と日経産業新聞が解説する。
▼「レッドブル」など海外勢が開拓した市場に日本企業が一斉に参入し、先行組との違いを訴えようと知恵を絞る。リゲインブランドの活用もその一つで、昔を知る中高年を狙う作戦だ。株価は上がった。五輪も来る。今こそ景気よく振る舞いたいが、バブルと同じには無理。そんな寄る辺なさをCMの替え歌が巧みに突く。