首都直下地震、死者2万3000人を想定 被害95兆円
中央防災会議の作業部会、火災対策徹底促す
国の中央防災会議の作業部会は19日、マグニチュード(M)7級の首都直下地震が起きた場合、最悪で死者2万3千人、経済被害が95兆3千億円に上るとの想定を公表した。地震後の火災被害が大きく、最大61万棟が全壊・焼失する。耐震化や火災対策を徹底すれば死者は10分の1以下、経済被害は半減できるとも提言。政府は今年度中に地震対策大綱を改定し、行政機能や企業活動を維持して住民を守る対策を急ぐ。
東日本大震災を受け、首都直下地震の発生メカニズムや被害想定を8年ぶりに見直した。「30年以内に70%」の確率で起きるとされるM7級の地震を中心に被害を試算し最終報告にまとめた。
建物やインフラなど被災地の直接被害が47兆4千億円。生産・サービス低下によって全国に及ぶ経済活動への影響が47兆9千億円。総額は名目国内総生産(GDP)の約2割にあたる。
具体的には、火力発電所の運転停止で電力供給能力が半減し首都圏の約半分の1220万軒が停電。断水の影響は1440万人に及ぶ。鉄道は最大1カ月運行停止になる可能性がある。
津波被害が甚大だった東日本大震災とは違い、首都直下地震の死者数の7割は火災による犠牲と想定。都心部の木造住宅密集地で火災が同時多発し、避難場所に着く前に火災に取り囲まれるケースが多数発生するとみられる。帰宅困難者は800万人、避難者は720万人と試算した。
その上で、政府には東京都内で業務が続けられなくなった際のバックアップ体制を準備したり、災害緊急事態時の放置車両の強制撤去など新たに必要な制限を検討したりすることが必要とした。
企業に対しては、交通機関がまひして通勤できる人が大幅に減ることを見込み、一部業務を休止・縮小して事業継続するよう要請。被災者への食料や日用品の供給、電力や水などのライフライン復旧に優先して取り組むよう求めた。
首都圏の住民にも住宅耐震化や食料備蓄、地域での初期消火訓練など防災力を高めることへの協力を要請した。
関東大震災と同じM8級の地震についても被害を想定し、死者7万人、経済被害160兆円と試算した。ただM8級の地震は数百年単位の周期性で発生しており「当面発生する可能性は低い」としている。