上履きはママが重宝 小学校アイテム、大人が愛用
機能はそのまま、大人流にアレンジ
「かわいい」。2月、東京を訪れた前橋市の中村美保さん(32)は東京・蔵前で見かけた看板の前で思わず足を止めた。迷わず階段を上りデザイン事務所直営の雑貨店「ニューオールドストック」(東京・台東)の中へ。目当ての品は「いろばき」だ。
「いろばき」はデザイン事務所「オトギデザインズ」の森岡聡介さん(34)がデザインを手がけ、アキレス(東京・新宿)が製造を担うコラボ商品だ。「なじみあるものの良さをいかした上で新しい価値を生み出したい」。台東区が運営する廃校した小学校を改修して作ったアトリエ「台東デザイナーズビレッジ」に入居し、構想を練っていたところにふと頭に浮かんだのが「上履き」だった。
中敷きに「みぎ」、「ひだり」と書いたり、カラフルな色を採用したり。デザイン性の高い商品だが、それだけでは大人の心はつかめない。東京都墨田区の関真由美さん(35)は第2子を妊娠中で「すぐに履けて歩きやすい靴を探していた。目的にぴったり」。中村さんも「丸洗いできるところも良かった。実用性のある商品かどうかも重要」と話す。
機能性も受けて、2010年の発売以来、インターネット販売と合わせて毎月20~30足売れる人気商品になった。
ブリキの色味をリアルに再現
「懐かしい」。インターネットのサイトを閲覧していた静岡県富士市の小本地優子さん(46)は思わずつぶやいた。小本地さんの目を引いたのは「昭和ヲリメイクスルブランド」がコンセプトの悪G堂(東京・台東)が主にネットで販売する「リアルバケツトート」だ。
小学校に置いてあるようなバケツの色味などをリアルに再現した商品。
「店のコンセプトに合う『昭和』を象徴するものに遊び心を加え、日本の良さをものづくりを通して伝えたかった」(同店)
購入した小本地さんは保険の外交員。仕事用のバッグとして愛用しているといい、「(バッグを)きっかけに顧客と会話が広がることもある」。東京都足立区の倉田夏輝さん(35)は「慣れ親しんだ外観だけど斬新だし面白い。何より使い勝手がいい」と話す。これまでに約200個売れたという。
革カバン専門店ヘルツ(東京・渋谷)は子ども向けがメーンだが、長く使い続けられるデザインにして、大人向けサイズのランドセルも販売している。先日購入した女性は、ランドセルの形が好きで大人向け商品がないか探していたらしく「通勤で使いたい」と話していたという。
ジャポニカ学習帳で書道の練習
文房具のロングセラー商品を再び手に取る大人も増えている。文房具カフェ(東京・渋谷)を訪れていた東京都立川市に住む60代の主婦はショウワノートのジャポニカ学習帳を書道の練習に活用しているという。「質がよくマス目があるので書きやすい。若返った気持ちにもなる」。千葉県流山市の50代の主婦は「変わらないデザインを見ると、当時を鮮明に思い出すから不思議」と目を細める。
文房具各社も大人向け商品に力を入れる。三菱鉛筆が14年1月に数量限定で発売したロングセラーの高級鉛筆「uni」や消しゴム付きの定番「9852番」の限定カラーを3本セットで発売したところ若い女性を中心に人気に。同社は「雑貨感覚で手に取ってもらえたようだ」と話す。
サクラクレパスは「クレパス」のデザインを使った消しゴムを05年から販売し100万個以上売り上げた。趣味の塗り絵や絵はがきで「クーピーペンシル」を使う人も増えているという。
長く愛され続ける品は質も高い。「懐かしさ」だけでなく品質への「信頼感」や「利便性」が大人の購買意欲を後押ししているようだ。(鷹巣有希)
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