原発再稼働、動けぬ薩摩川内市 市の判断は10月以降か
九州電力川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働を巡って、地元同意手続きの第一歩となる同市の定例市議会が27日開会した。市は再稼働を前提に準備を進めたい考えだが、国の審査が遅れているため身動きがとれない状態。市の最終的な判断も10月以降になる可能性が高くなってきた。
岩切秀雄市長は同日の本会議で「原子力規制委員会による審査の推移を見守りたい」と述べた。見守るのは規制委がまとめる原発の防災・安全対策についての審査書だ。川内原発の事実上の「合格」に相当する審査書の完成は9月以降になるとみられる。
規制委は先月16日に「仮合格」の審査書案を了承。同時に国民から同案に関し意見を募るパブリックコメントを実施したところ、8月15日の締め切りまでに約1万7千件の意見が集まった。内容を精査し意見を審査書に盛り込む作業が想定よりかかっているもようだ。
岩切市長は27日の本会議で「パブリックコメントで出た意見を必要に応じ反映した上で、正式に決定し許可すると認識している」と規制委の"お墨付き"自体に変化はないと説明した。
再稼働に向けて自治体の手続きは幾つもある。
審査書完成後は原発から30キロ圏の市町と鹿児島県が原子力規制庁の担当者を招き住民向けの説明会を開くが、規制庁担当者の日程調整や会場確保、地域住民への周知などがある。定員を上回る場合は抽選で、参加通知など事務作業が続く。
審査書完成から説明会開催までは「おおむね1カ月を要する」(県原子力安全対策課)。審査書の完成を仮に9月中旬とすると説明会は早くて10月中旬だ。
県は説明会参加者にアンケートを実施する。理解が不足していると判断した場合、伊藤祐一郎知事は「追加の開催もある」と再三明言している。
薩摩川内市議会が再稼働の是非を協議するのは同市での説明会の後だ。9月定例市議会の会期は10月9日までで、期間中に協議入りできない場合は「臨時議会の開催を市議会にお願いするかもしれない」(岩切市長)。
市議会全体は再稼働の是非について態度を明らかにしていないが、厳しい電力需要から容認する市議が多いとみられる。市議会がゴーサインを出せば、原発早期稼働を切望する岩切市長が再稼働に同意するのは確実だ。
市議会と岩切市長が再稼働に同意すれば、手続きの舞台は県議会に移る。県議会で協議するのは薩摩川内市を含む全5回の住民向け説明会の終了後のため、9月議会(9月9日~10月3日)の会期中に協議入りできない公算が大きい。臨時議会か12月議会に回ることになり、地元同意はさらに後ずれしていく。
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