欧米、ウクライナへの制裁強化 衝突で死者多数
【ブリュッセル=御調昌邦、ワシントン=吉野直也】欧州連合(EU)と米国は20日、反政権デモ隊と警官隊の衝突が再発したウクライナで多数の死者が出たのを受け、同国政府の武力行使を強く非難した。米EUは制裁強化でも足並みをそろえ、圧力を強化する。ただ、制裁の効力は乏しいとみられ、混乱拡大に歯止めをかける見通しは立っていない。
EUは20日、臨時の外相理事会を開催し、ウクライナへの制裁を決定した。衝突を起こした関係者がEU内に保有する資産の凍結や、EUへの渡航禁止が主な内容。衝突で使われる恐れがある装備の輸出も一時停止する。制裁の対象者には衝突に関与した政府関係者を含める見通し。
首都キエフでは20日、停戦合意が破られる形で反政権デモ隊と警官隊が衝突し、同日だけで40人以上の死者が出た。
EUのアシュトン外交安全保障上級代表は外相理事会後の記者会見で「衝突の激化は回避しなければならない」と述べ、平和的な解決を求めた。
米ホワイトハウスは20日、ウクライナ治安当局のデモ隊への武力行使を非難する声明も発表した。治安部隊を首都キエフから直ちに撤収させるようヤヌコビッチ政権に要求。抗議活動の権利を認めるよう求めた。
バイデン米副大統領は同日、ウクライナのヤヌコビッチ大統領と電話会談し、治安部隊の即時撤収を求めた。野党側との対話を重ねて事態を落ち着かせる措置を直ちに取るよう要請した。
アーネスト米大統領副報道官は記者会見で、ウクライナへの追加制裁を検討する考えを示した。「できるだけ早く決定し、発表できるよう(追加制裁の)選択肢を考えている最中だ」と語った。
米国は既にウクライナ政府高官への入国査証(ビザ)の発給を制限している。暴力行為の責任者への資産凍結措置の発動を決めた欧州連合(EU)と足並みを合わせる狙いがある。
これに関連してオバマ米大統領は20日、ドイツのメルケル首相に電話し、ウクライナ情勢を協議し、「深刻だ」との認識で一致した。ドイツを含めたEU各国と緊密に連携し、政治的な解決をめざして協力する方針を申し合わせた。