ダム貯水で水没の鉄道橋、夕張市民が映画に
鉄骨のピラミッドが連なったような珍しい形状で知られる北海道夕張市の鉄道橋「三弦橋」が4月下旬、ダムの試験貯水のため水没する。市民に親しまれてきた橋を映像で残そうと映画製作の準備が進むなど、消えゆく橋が熱気に包まれている。
北海道開発局によると、三弦橋は1958年に完成。全長約380メートルで、ダム湖「シューパロ湖」に架かる。下流で大型ダムが運用を開始するのに伴い、水没することになった。四角すいをつなげた三弦トラスと呼ばれる構造で、この造りの鉄道橋としては国内に現存する唯一の橋だ。
伐採された木材を運ぶために建てられたが、輸送方法の変更により、約5年で使われなくなった。その後は、独特の景観と、周囲の山や湖との対比で観光客らを楽しませてきた。
水没が決まったのは2012年9月。通常、水没する構造物は産業廃棄物として解体されるが、愛好家が開発局に維持を要望。夕張市が文化財に指定し、現在の姿のまま水面下に沈むことになった。橋が解体されずにダムに沈むのは珍しいという。市教育委員会の担当者は「水中であっても形をとどめ、市民らの記憶に残したかった」と話す。
1月には夕張市民ら9人が、三弦橋がたどった経過と夕張市の盛衰を重ねた映画を製作しようと実行委員会を設立した。
映画は8月に完成予定。実行委の代表を務める同市の会社役員、蓑島慶介さん(36)は「地元の素晴らしい景色がなくなるのは寂しい。映像で未来につなげたい」と話している。〔共同〕