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廃炉作業の頼みの綱はロボット、福島第一原発の今

建設ITジャーナリスト 家入龍太

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ケンプラッツ
東日本大震災で被災し、原子炉6基すべてが廃炉となる東京電力福島第一原子力発電所(福島第一原発)の現場は今、どうなっているのか――。建設ITジャーナリストの家入龍太氏は、2014年3月6日、現場に足を踏み入れ、その姿を間近に見てきた。第2弾となる今回は、福島第一原発の目下の課題である、原子炉建屋内への地下水流入による汚染水の増加を食い止める作業、そして高い放射線量で人が立ち入りにくい1~3号機の状況把握作業について、建設IT(情報技術)の視点を中心にリポートする。

東日本大震災時にメルトダウンを起こした福島第一原発の1~3号機。現在も圧力容器内に冷却水を送り込み、冷却を続けている。

よく報道されているように、これらの原子炉建屋に周辺の地下水が流れ込んで原子炉容器から漏れ出した冷却水と混じるため、放射能で汚染された水が毎日約400トンも増え続けている。現時点での最大の問題の1つだ。

日量2000トンの汚染水処理を実現へ

汚染水タンクの容量は1000トンのものが一般的だ。そのため2~3日に1基ずつのタンクを建設しなければ汚染水の増加に対応できない。2014年3月6日に現場を訪れたときは、あちこちで汚染水タンクの増設作業が行われていた。

東京電力によると2014年1月28日現在、汚染水の総貯蔵量は約42万トン、タンクの総貯水容量は約45万トンに達し、タンクの増設計画は既に設置済みの分も含めて合計80万トンまでめどがたっている。

とはいえ、汚染水を無尽蔵に増やすことはできない。汚染水の増加を食い止めることは、福島第一原発の廃炉作業にとって喫緊の課題なのだ。

これらの汚染水を「ALPS」という多核種除去設備を通すと、セシウムなど62種類の核物質を法定濃度未満まで取り除くことができる。現行のALPSは日量250トン×3系統が稼働している。

今後、日量250トンのALPSを3系統、日量500トンの高性能ALPSを1系統増設する計画だ。増設することで、合計すると最大で日量2000トンの汚染水を処理できるようになる見込みだ。とはいえ、3月18日には処理不調により全系統が停止するなど、安定稼働に不安も残る(24日時点で2系統が運転再開)。原因特定と再発防止策の策定が急務といえそうだ。

また、ALPSでもトリチウム(三重水素)という水素の同位体を元素の一部に含んだトリチウム水だけは除去できない。政府は「トリチウム水タスクフォース」を設置して対策を検討中だ。

マクロとミクロの対策で地下水流入防ぐ

地下水の止水作業も進みつつある。そこで凍土遮水壁という「マクロな対策」と、ロボットによる地下水漏えい個所の特定と止水対策を行うという「ミクロな対策」が同時並行で進行している。

まず、マクロな対策としては土遮水壁による止水だ。1~4号機の建屋をぐるりと囲むように地盤内に配管を埋設し、ここに冷却材を循環させて地盤を凍らせる。つまり、凍土による"地下ダム"を構築するという計画だ。

地盤を凍結させて止水する方法は、シールドトンネルの工事でよく使われる。左右から掘り進んできた2台のシールド機を地中で「ドッキング」させるとき、シールド機同士を鋼板などでしっかりと接続し、止水するまでの間、両シールド機の前にはさまれた部分の土を一時的に凍結し、掘削する。

1~4号機を取り囲む凍土壁は、シールド機のドッキングに比べると相当規模が大きく、その維持には膨大な電力を必要とする。応急的な対策としては有効だが、長期的に見れば地下水流入個所を特定し、止水することが望ましい。

遠隔操縦ボートで1号機の地下水漏れ発見

原子炉建屋内に地下水が流入している場所を発見し、止水するミクロな対策も動き始めている。1~3号機周辺は放射線量が高いため、長時間、人間が立ち入って地下水流入個所を探すことは難しく、遠隔操作による調査が必要だ。

その第一歩として、東京電力は2013年11月、1号機建屋の内部で、汚染水が格納容器から地下にある「トーラス室」にどのような経路で流れているのか遠隔操縦のボートで調べた。資源エネルギー庁平成24年度発電用原子炉等事故対応関連技術基盤整備事業(遠隔技術基盤の高度化に向けた遊泳調査ロボットの技術開発)において開発された、長尺ケーブル処理技術と自己位置検知要素技術も使われている。

トーラス室とは原子炉圧力容器を納めた格納容器の下部にリング状に設けられた圧力制御室を収容する空間で、建屋の地下で格納容器の周囲をぐるりと一周するように設けられている。11月13日は時計回り、14日は反時計回りで、それぞれトーラス室を半周ずつボートを航行させて調べた。

その結果、13日に建屋内部の1カ所でベント管から、他の1カ所でサンドクッションドレン管から漏水しているのが発見された。

この調査ではトーラス室の内側の漏水を調べたが、周囲の地盤と接するトーラス室の外側壁面を同様に調べることで地下水の流入個所が発見できそうだ。

ロボットが水中の漏水個所調査

地下水が建屋に流れ込んでいる個所を調べるロボットも開発された。日立製作所と日立GEニュークリア・エナジー開発した「水中走行遊泳型ロボット」だ。その名の通り水中を自由自在に泳ぎ回れるだけでなく、水中にある垂直の壁面を走行することができる。

高さ330×長さ605×幅450mmの本体には1組のクローラー(無限軌道)のほか、水中で姿勢を制御する垂直スラスター(プロペラ型の推進器)が4基、水平スラスターが2基付いている。大気中の重さは31.5kgだ。

原子炉建屋の水底をクローラーで走行しているときに障害物があった場合には、これらのスラスターから水を噴射して水中を遊泳し、障害物を回避する。また、遊泳中に姿勢を90度変化させ、垂直の壁にロボット本体を押しつけるようにすると垂直の壁面も走行できる。

人間が入れない場所は「形状変化型ロボット」で

両社は、人間が入れない障害物や構造物に囲まれた狭い空間を移動しながら、冷却水の漏えい場所や燃料の状態を調査する「形状変化型ロボット」も開発した。

2台の小型クローラーとカメラが関節を介して接続されており、形を自由に変えながら直径100mmの管内や凹凸面、格子寸法25×90mmのグレーチング上を安定的に走行できる。

平面走行時の寸法は高さ90×長さ250×幅272mm、管内走行時は高さ90×長さ640×幅65mmで、重さは7.5kgだ。

レーザースキャナーで建屋内部を3Dモデル化

今後、1~3号機では原子炉建屋内の除染や遮へい物の設置、原子炉格納容器の調査や補修などの作業が予定されている。そのために必要なのが、がれきなどが散乱した建屋内部のアクセスルートや作業場所の障害物などの位置や形を正確に把握することだ。

そこで1号機と2号機では2013年12月に、遠隔操作で自走するロボットに3D(3次元)レーザースキャナーを取り付けて建屋内部の計測を行った。そのデータから建屋内部の3Dモデルを作った。

建屋内部の状況を把握した後は、いよいよ本格的な解体や補修などの施工となる。そのためのロボットも現場に投入され始めた。

解体や補修用のロボットも続々

三菱重工業の遠隔操作ロボット「MHI-MEISTeR(マイスター)」は、足回りには対地自動追従式の独立4クローラーを備え、時速2kmで走行する。傾斜は40度、段差220mまでの階段昇降や不整地走行、狭い場所での走行など、小回りと機動力を発揮できる。

三菱重工業は、高さ8mでの高所作業ができる遠隔作業ロボット「MHI-Super Giraffe(MARS-C)」(スーパージラフ)も開発した。小回りが利く4輪駆動・4輪操舵(そうだ)方式の台車に5段伸縮式のアームを搭載したものだ。

アームの先端にはツールを取り付けてバルブの開閉や溶接など、様々な作業が行える。三菱重工では、折りたたみ式やパンタグラフ式の荷揚げモジュール、せん断破壊作業を行うウォールクラッシャーや荷揚げ用デッキ・バケットなどの開発を検討中だ。

さらに溶接やドリル、ハンド、漏えい検知などの各種用途向けの先端工具や、段差などに強いクローラー式台車モジュールなどの開発を行い、より高機能な遠隔作業ロボットへと進化させていく予定だ。

作業中はリアルタイムに重心位置を計算し、転倒しそうになったときは操縦者にアラームを発信するとともに、アウトリガーが浮き上がる前に作業を停止する安全装置も付いている。

三菱重工は各モジュールを接続するための駆動電力や通信、油圧などの関連情報をすべて公開、他社にもモジュールの開発を呼びかけている。

一方、東芝は4足歩行ロボットを開発した。車輪やクローラーで走行するロボットでは到達できない場所で作業できるというもので、無線操作により4本の足で障害物を避けながら時速1kmで歩行し、階段も上り下りできる。

大きさは、高さ1066×長さ624×幅587mmで重さは65kg。バッテリーで連続2時間歩行できる。"子機"のような小型走行車を搭載でき、到達した地点で発進させると狭い場所での設備や機器、配管などを調査できる。

福島第一の新技術を建設業に生かせ

福島第一原発の廃炉完了には、40年はかかると見られている。各原子炉建屋から使用済み燃料棒を取り出した後は、溶け落ちた核燃料を回収するという、さらに難度の高い作業が待ち受けている。

今回の震災で被害はなかった5号機と6号機は、実物大の実証試験に活用しながら、廃炉を完了するまで技術開発がさらに進むことになる。

一般の工事で新工法などを開発する場合は、コストが技術開発の鍵となるが、福島第一原発の場合はコストにかかわらず、廃炉を実現するための技術開発が必要となる。今後も3Dモデルやロボットによる無人化施工などの新技術が開発されていくだろう。その労力やコスト、成果を福島第一原発の廃炉だけに消費するのはもったいない。

福島第一原発の現場から生まれた新しい技術は、今後、寿命を迎える世界各国の原子炉の廃炉作業にも役立つに違いない。そして一般の建物や土木構造物の維持管理や補修、災害時の復旧などに使えるものがたくさんある。

家入龍太(いえいり・りょうた)
1985年、京都大学大学院を修了し日本鋼管(現・JFE)入社。1989年、日経BP社に入社。日経コンストラクション副編集長やケンプラッツ初代編集長などを務め、2006年、ケンプラッツ上にブログサイト「イエイリ建設ITラボ」を開設。2010年、フリーランスの建設ITジャーナリストに。IT活用による建設産業の成長戦略を追求している。家入龍太の公式ブログ「建設ITワールド」は、http://www.ieiri-lab.jp/。ツイッターやFacebookでも発言している。

[ケンプラッツ2014年3月26日付の記事を基に再構成]

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