検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

パナソニックの介護ロボ ベッド型に見える本気度

詳しくはこちら

パナソニックが介護ロボットの開発戦略を進化させている。ベッドから高齢者などを車いすに移動させるため、当初は人の背丈ほどある双腕型のロボットを想定していたが大きすぎるなどの理由で断念。安全性や価格、使い勝手など現場での使いやすさを追求した結果、6月から発売するのがベッド型の「リショーネ」だ。日本が主導した生活支援ロボットの国際安全規格の認証も取得している。

車いすへの移動を楽に

「リショーネ」は「離床」の名前の通り、中重度の要介護者が寝たきりにならず、ベッドから車いすに移動するのを楽にし、自立を支援し移動の自由を手に入れてもらおうというもの。ベッドが真ん中から2つに分かれ、片方の背中が持ち上がりリクライニングシートとなり、車いすになる。ベッドから高齢者を抱き上げる人の腰の負担を楽にする目的も大きい。価格は約100万円。

車いすへの移乗を支援する同社の介護ロボットの原型は2006年ごろに開発したトランスファー・アシスト・ロボット(TAR)だ。リショーネとまったく形が違う。人の背丈ほどある双腕型ロボット。2本の腕を高齢者らの体の下にいれ、腕で持ち上げて車いすに移す。人の動作をロボットにそのまま置き換える発想だ。

これは「一応ヒアリングはしたが、開発者がこういうのはどうかと考えて作った」(パナソニックプロダクションエンジニアリングの河上日出生アシストベッドプロジェクトリーダー)。しかし、展示会に出すと「こんな大きなもの部屋に入らない」など介護関係者から総スカンを食った。

ヒト型へのこだわり捨てる

しかもロボットアームを高齢者の軟らかい背中の下に安全に差し込むことや、2つのアームで利用者を抱えて安定して運ぶのが難しい。抱えられる方も不安だ。この形は早々と断念する。開発チームは「ヒト型にこだわるのはやめよう。現場の意向を最大限に取り込もう」と軌道修正。様々な案から一体化したベッドと車いすの分離方式にたどり着く。

ただ、09年に発表したロボティックベッドもリショーネとかなり趣が異なっていた。寝ていた部分が車いすに全自動で変わるまさに"変身型ロボット"。利用者が寝たまま指示すると、マイクが音声を拾って認識し、自動で変身する。

「技術を詰め込んだ理想型の全自動変身型ロボ」だったが、これも展示会や現場の反応はいまひとつだった。介護現場は様々な私物が置かれる。まだ、必要とするスペースが大きすぎるのだ。

ベッドの位置を割り出したり、モーターを制御したりするセンサーのほか、約10の高性能モーターも必要で「かなり原価がはる」と価格の面でも現実的ではなかった。

1台1000万円の愚

介護ロボットの開発状況について、関係者に聞くと、「死屍累々(ししるいるい)の状況。補助金が切れればそれで終わり」の繰り返しだったという。最大のネックは価格。「1台1000万円のロボットを現場に見せても苦笑いしかされない」(経済産業省産業機械課)

パナソニックは現場の動向やリクライニングベッドの価格などから「目標はまず100万円」と考えた。全自動はあきらめ、車いすに移るときは滑りやすいシートに乗ってベッドの片側に移動してもらい、半自動で椅子に変える。介助者が必要だがモーターの数は少なく、価格を抑えられる。それをようやく実現したのが6月から発売するリショーネだ。

筑波大学付属病院が病棟を改造してつくった模擬病室などに持ち込んで、実際に健常者や職員、軽度の患者に使ってもらった。車いすが部屋から出るまでどのくらいのスペースが必要か測定、「椅子が離れた後のベッド側に出っ張りがあると、見舞いにきた子どもなどがぶつかって危ない」(同大)など意外な指摘もあり、構造を見直した。

産業技術総合研究所と日本自動車研究所などが開設した、生活支援ロボット安全検証センターに持ち込み、衝突試験や電磁波の試験など様々な安全検証試験を受け、改良を続けた。「当初はリスクが山のようにあった」(同センター)という。

国際安全規格の認証取得

こうした結果、2月に国際標準化機構(ISO)が発行した生活支援ロボットの国際安全規格の認証をダイフクの製品とともに早々と得た。

リショーネはまず中重度の要介護者を対象に施設向けに販売する計画。すべての人が利用するのではなく「1割程度の人に使ってもらいたい」。

リショーネが現場に受け入れられ、普及するかはわからない。「もっと安く」という声もある。機能を単純化したために、中国メーカーなどにまねされるリスクはある。しかし、「まず新分野を確立する。まねされるのは市場があるということ」と考える。

地味が示す本気

日本の大手メーカーが考えられる技術をすべて盛り込み、介護現場を技術力をアピールするショールームにする時代は終わった。リショーネにロボットの面影はもはやない。地味な介護機器だ。それはパナソニックの本気度を示す。

介護現場は外国人に頼らないと回らない時代が目の前にある。プロジェクトリーダーの河上氏はある介護事業者から「介護する人がいなくなる問題意識を持ってほしい。1週間のうち5日をロボット、1日外国人、日曜日だけ日本人が介護する時代が来る」と言われた。

ベッドから車いすに移すロボットは、いくつもの方式が提案・開発されている。パナソニックに続く挑戦は大歓迎だ。

ロボット安全規格は有効か

米社製、ロボット掃除機「ルンバ」が発売される前に日本の大手電機メーカーは同様の製品を試作していたが、「ろうそくを倒して火事になったらどうする」「階段から落ちて下にいる2歳児がけがしたら……」と考え、発売を見送ったという。今もルンバは市場で圧倒的に強い。

比留川博久・産業技術総合研究所知能システム研究部門長は「これまで大手メーカーが介護ロボットなどに進出するには事故が起きた時にブランド価値を損なうリスクが大きすぎた」と指摘する。

生活支援ロボットの国際安全規格が2月1日、国際標準化機構(ISO)から発行された。「基準があれば、開発しやすいし、参入しやすくなる」(パナソニック)とメーカーの期待は大きい。同社は万能全自動型のロボティックベッドの開発も続けている。

あらゆる製品はそこから得られる便益とリスクのバランスの上にたつ。便益が小さいのにリスクばかり高い製品は支持されない。規格は様々な危険を分析する「リスクアセスメントシート」などを使い、本質的にロボットを安全にする設計や、人を危険から守るための方策などの考え方をまとめたものだ。

ISOの認証は強制ではなく、取得したからといって、製造物責任から逃れられるわけではない。しかし取得までに様々な安全の検証を行うことで「データが集まり、企業としてこれだけのことをやった」といえる立場になる。

「万が一、裁判になったときにも大きい」というのが関係者の見解だ。

ただ、介護ロボットなどはほとんど実用化されていない。生活支援ロボットの国際規格作りも難航した。「産業用ロボットと同じように数値基準を作るべきだ」との声が欧州から上がったものの、「誰がどう使うかわからない状況で、数値を決めるのは無理」であるからだ。

そこで危害の発生する確率と、長期間治療が必要な重大障害から一時的な痛みや無傷まで、危害のひどさのバランスを考えて、リスクを減らす考え方をとった。

最終的にリスクはゼロにならない。自動車研究所ロボットプロジェクト推進室の藤川達夫室長は「リスクを受容可能なレベルまで落とす」と説明する。具体的な安全対策は企業が考える。重要なパートナーが、つくば市にある「生活支援ロボット安全検証センター」だ。

走行試験装置や走行模擬装置、耐久性試験機などを備え、衝撃耐久性試験や衝突安全性試験などを行う。パナソニックのリショーネのほか、トヨタ自動車のモビリティロボットなど様々なロボットの検証が行われている。同センターを担当する産総研の知的システム研究部門の大場光太郎副研究部門長は「安全基準の妥当性を検証するプロセスが大事」と指摘する。

生活支援ロボットは、産業用ロボットのように人とロボットが隔離されていないが故に人と接触しやすい。また工場のように操作の専門家でない一般市民が使う。従来とは異なる安全性が求められている。

その意味では農作業を軽減するロボットも似ている。安全検証センターは、農業や漁業など1次産業からもアドバイスを求められているという。

普及の鍵、コーディネーターが握る

安全に関する国際規格ができ、開発企業の考え方は柔軟になり、センサーなどの大事な部品の性能が上がり価格は安くなった。経済産業省によるロボット介護機器の大規模な導入促進事業も始まる。様々な条件は整った。しかし、これまでも「介護ロボット実用化元年、離陸前」と何度いわれたことか。普及に向けた課題は何か。多くの開発者が口にするのが、「介護の現場の実情と技術の両方がわかるコーディネーター」の存在だ。

忙しい介護現場からは「とにかく人手が欲しい」「(アニメの)アトムが欲しい」と万能型のロボットを求められるケースが多いという。ロボット導入による省力化ではなく、介護士の引き継ぎ業務をIT(情報技術)で効率化し、実介護時間を増やした方が効率が上がる職場もある。

一方、ロボットを作るメーカーが技術力を誇示しようとすると、かつてのパナソニックのようになる。

介護機器は健常者が開発し、使うのが認知症の高齢者などというケースが多いのも課題だ。家電製品なら開発者が自分の使い勝手の良い製品を作ればいいが、認知症の人の意向を聞き取るのは難しい。

産総研の大場氏は「ロボット化は技術的にはできる。あとはサービスシステムをどうデザインするか」と語る。それはコストダウンであり、安全規格の詰めであり、開発者、施設、利用者の使い方の仕組みであり、水平展開の仕方だろう。

技術だけで突破できない分野は日本は必ずしも得意ではない。それでも、介護ロボットは高齢化社会先進国の日本が世界に貢献すべき分野だ。日本のものづくり力の進化が求められている。

(企業報道部 三浦義和)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_