丸ごとレビュー オフィス付きで4万円前後 デルの低価格タブレットを試す
フリーライター 竹内 亮介
デルは1月中旬、8型液晶を搭載するウィンドウズ8.1搭載タブレット「Venue 8 Pro」を発売した。オフィス パーソナル 2013をバンドルした下位モデルでも直販価格で3万9980円と、ほかの8型ウィンドウズタブレットと比べてかなり安いこと、そしてさまざまな純正周辺機器を準備していることが特徴となる。今回はこの低価格なタブレットの使い勝手を検証していこう。
バッグにも収納しやすい
Venue 8 Proでは、オフィス パーソナル 2013をバンドルする下位モデルと、オフィス ホーム&ビジネス 2013をバンドルする上位モデル(直販価格は4万1980円)、上位モデルにSIMフリーの3G通信機能を追加したモデル(直販価格は4万9980円)を用意する。国内向けでは1月15日前後に発送が開始されたようだ。
CPUはインテルの「Atom Z3740D」(動作クロックは1.33ギガヘルツ)を搭載し、メモリは2ギガバイトなど、基本仕様は他社の8型ウィンドウズタブレットとほぼ同じである。ストレージは全モデルで64ギガバイト搭載しており、32ギガバイトモデルよりも保存できるファイル容量が多い。
大きさは幅130ミリで奥行きが216ミリ、厚みは8.9ミリと8型タブレットの標準的なサイズだ。グーグルの7型タブレット「ネクサス7」(2013年モデル)と比べると、幅と奥行きは16ミリ大きい。重ねて比較してみると一回り大きな印象だが、パネルサイズの違いを考えれば妥当なところだろう。スリムなので、小型バッグやビジネスバッグのタブレット用スリットにも問題なく収納できた。
裏側はややしっとりとした触感の表面加工が施されている。また「DELL」というロゴを中心に同心円状の溝が刻まれており、裏に手を当てて持つと滑りにくい。サイズ的には片手を開いて側面を挟むようにして持つよりも、手のひらに乗せて親指で支えるようにして持つことを前提としているだけに、裏面を滑りにくくしているのだろう。
重さは395グラム。8型ウィンドウズタブレットではレノボの「Miix 2 8」が350グラムなので最軽量ではない。Andoroidタブレットは300~400グラムが主流、アップルの「iPad mini Retinaディスプレーモデル」(WiFi)は331グラムなので、7~8型タブレットの中では、平均か、やや重い。
左右の手に299グラムのネクサス7とVenue 8 Proを持つと、やはりVenue 8 Proの方が重いと感じる。とはいえ「ちゃんと比較すれば」というレベルの話だ。電車の中で片手持ちしても、手に負担を感じるようなことはなかった。
ボタンは上側面に電源ボタンとボリュームボタン、左側面に「ウィンドウズボタン」がある。ウィンドウズボタンは、アプリが動作中でもウィンドウズ8.1のスタート画面にすぐに戻ったり、各種機能を呼び出したりするためのトリガーになる重要なボタンだが、形状が小さく電源ボタンとサイズも変わらないので、ちょっと使いにくいと感じた。
ウィンドウズ8.1は快適に動作
アトム Z3740Dは、他社の8型ウィンドウズタブレットが搭載する「アトム Z3740」と比べると、仕様上はわずかに性能が低い下位モデルにあたる。ただ、ウィンドウズ8.1のスタート画面をタッチでスクロールしたり、アプリを起動して各種操作を行ったりしても、違いはまったく感じられない。他社タブレットとの比較において、CPUの違いを気にする必要はないだろう。
液晶ディスプレーの解像度は1280×800ドットで、タッチパネルは10点同時タッチに対応する。パネルはIPSタイプで、視野角が広くて斜めから見ても色味の変化はなく、非常に美しい。最近の高級7型AndroidタブレットやiPad mini Retinaディスプレーモデルが採用する高解像度パネルではないので不安を感じる人もいるかもしれないが、8型でこの解像度なら、デジカメで撮影した写真も緻密で美しく表示できた。
またこの解像度と8型パネルの組み合わせだと、デスクトップの文字やアイコンが小さくなりすぎることがないのもうれしい。もちろん長時間のテキスト入力は厳しいが、情報収集や閲覧が主体なら、重くて持ち歩きがしにくい10型前後のタブレットよりは、8型モデルの方が向いている。
充電は上側面に装備するマイクロUSB端子経由で行う。いくつか他社のUSB充電機を試したところ、充電ができるものとできないものがあった。パソコンのUSBポート経由や、充電専用ではないマイクロUSBケーブルを使うと失敗することが多い。標準添付される充電機以外を使うなら、出力が大きめの充電アダプターと「充電専用ケーブル」が必要のようだ。
バッテリー駆動時間は、満充電で最大10時間だという。今回は3時間ほど携帯し、そのうち1時間ほど喫茶店の無線LAN経由でウェブブラウズやメールチェックなどを行った。事務所に戻ったときのバッテリー容量は残り85%前後だった。軽作業主体なら、スペック通りの使用時間も夢ではないという印象だ。
最安値だが満足感は十分
ざっくりといつものチェックやテストを行ってみたが、使用感やスタミナは、他社の8インチウィンドウズタブレットとまったくといっていいほど変わらない。重さもMiix 2 8ほどの軽さはないが400グラムを切っており、7~8型タブレットとしては不満の出るようなスペックではない。
突出した部分はないものの、必要な要素をきちんと押さえた上で低価格で提供するというデルらしい製品である。最安値と言うことにおびえる必要はなく、安心して使えるタブレットである。
また今回は到着が遅れてテストできなかったが、保護カバーとしても機能するワイヤレスキーボードや、スタンドになるカバーケース、液晶画面をペンで操作できるスタイラスなど、便利な周辺機器を多数用意している。
特にデスクトップを多用するなら、細かい操作がしやすいスタイラスを追加すると良いだろう。10型前後のモデルなら、タッチだけでもデスクトップの操作は可能だ。しかしVenue 8 Proのような8型モデルでは、正直タッチだけだと操作ミスがそれなりに生じる。スタイラスがあればマウス操作とほとんど変わらない正確な操作が可能だ。
1970年栃木県生まれ、茨城大学卒。毎日コミュニケーションズ、日経ホーム出版社、日経BP社などを経てフリーランスライターとして独立。モバイルノートパソコン、情報機器、デジタル家電を中心にIT製品・サービスを幅広く取材し、専門誌などに執筆している。
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