都の特区指定「全域目指すべき」 諮問会議が苦言
政府の国家戦略特区諮問会議の有識者委員は25日、東京都が特区指定を千代田区や中央区など9区に限定したことに苦言を呈する異例のコメントを発表した。「都全域の指定を目指すべきだ」と、政府に調整を促した。都が提案した規制緩和も不十分として「早急な見直し」を求めた。特区を成長戦略の起爆剤と考える有識者と、規制緩和を慎重にとらえる都との溝が浮き彫りになった。
コメントを発表したのは坂村健東大院教授、竹中平蔵慶応大教授、八田達夫阪大招へい教授ら5人の有識者委員。
25日の閣議で、国家戦略特区になる自治体の範囲を決めた。神奈川県や大阪府、兵庫県などは全域指定になったが、都は自らの要望もあり、9区指定にとどまった。
特区諮問会議の有識者委員は「日本経済に占める都の比重は極めて大きい」と強調。特区が用意した規制改革メニューを幅広い地域で使うため、都全域が特区になるよう、政府と自治体で調整を進めるよう促した。都が提案した有期雇用の期間を延ばす特例が外国人限定だったことも批判した。範を示す狙いから都に踏み込んだ規制緩和を期待しているからだ。
政府は特区に選ばれた自治体ととともに、5月以降は「区域会議」を立ち上げて具体的な計画をつくる。区域会議は国と対象自治体と関係企業で構成する。有識者委員は「会議に参加する経済団体や金融機関のあり方など早急に決めるべきだ」と注文を付ける。
一方、都の担当者は「(容積率の緩和など)国が示した規制緩和メニューに適合する地域を選んだ。より広い分野で規制緩和が進むなら、特区のエリアを広げることは考えられる」と話す。国が用意した特区の規制緩和策そのものが不十分で、使いにくいとの見方もある。
北京訪問中の舛添要一都知事は25日、有識者委員の指摘に「(区域を)やたらと広げればいいものではない。具体的にできることをやっていくべきだ。特区は打ち出の小づちではない」と反発。「机上の空論をやっている人が政策決定をしていることが理解できない」と不快感を示した。