ウクライナ停戦、親ロ派なお反発 和平計画発表へ
【モスクワ=田中孝幸】ウクライナのポロシェンコ大統領は20日、親ロシア派勢力との戦闘が続く東部の「和平計画」を発表する。軍事作戦を一時停止し、親ロ派やロシア人義勇兵に武装解除と国外退去の機会を与えるのが柱。停戦を求めてきたロシアは一定の評価を示しているが、親ロ派は抗戦の構えを崩しておらず、説得は難しそうだ。
計画ではロシアとの国境封鎖後に軍による攻撃を一方的に短期間停止。親ロシア派に武装解除を促す。その後、最高会議(国会)の前倒し選挙を経て、地方分権を進めるための憲法改正に踏み切る行程を描く。武装放棄した戦闘員への恩赦や退路の提供も盛り込んだ。
ポロシェンコ氏は19日、ロシアのプーチン大統領に電話し、計画を説明。プーチン氏は計画をおおむね了承したうえで「住民が強く抗議している問題の解決に優先的に取り組むべきだ」と述べ、東部の自治権拡大を急ぐよう求めた。
計画には米国や欧州連合(EU)に加え、前政権の与党を含む国会の大半の会派がすでに支持を表明した。支援の主体である国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も19日、ポロシェンコ氏の路線を全面的に支持する意向を示した。
ウクライナ政府は停戦に先立ち軍事面での優位を確保しようと攻勢を強めている。親ロ派に投降するよう圧力をかける狙いがあり、19日には戦闘機や多数の戦車を動員してドネツク州の親ロ派拠点を攻撃。政府の発表によると、親ロ派の戦闘員約300人が死亡した。軍は20日、ロシアに接する東部国境地帯を奪回したと発表した。
ただ、4千人を超えるとされる東部の親ロ派武装勢力は政権との直接対話を拒否しており、抗戦を続ける方針だ。ウクライナ政府は親ロ派が支配地域を広げるのを許容しない立場で、停戦宣言が出されても早々に形骸化する公算が大きい。
市民の犠牲者が増えれば、ロシアがウクライナへの揺さぶりを強める可能性もある。ロシアのイワノフ大統領府長官は19日、「内戦下で自国民の虐殺が起こりつつある」とウクライナ政府の対応を批判。ロシアのペスコフ大統領報道官は20日、ウクライナとの国境地帯への軍部隊の増派を否定する一方、国境警備隊を増強していることを明らかにした。
親欧米路線を進めるウクライナはロシアと政策面で対立を深めている。ポロシェンコ氏は19日、EUとの自由貿易を柱とする連合協定を予定通り27日に調印する考えを表明した。ロシア産ガスのウクライナへの供給問題を巡る協議も再開のメドが立っていない。停戦のために両国がどこまで具体的に協力できるかは未知数だ。