米「環境への影響軽微」 カナダからの原油パイプライン建設
【ワシントン=芦塚智子】米国務省は31日、カナダから米テキサス州に原油を運ぶ「キーストーンXLパイプライン」の建設が、気候変動に与える影響は限定的との報告書を発表した。建設の早期認可を求める野党・共和党はオバマ大統領への圧力を強める方針。パイプラインの稼働は原油価格の低下要因となりそうだが、与党・民主党内の一部や環境保護団体は反発。今秋の中間選挙を控えるオバマ氏は近く難しい決断を迫られる。
報告書は、パイプライン建設計画の認可の有無がカナダのオイルサンド(油砂)生産量を大きく変動させることは考えにくく、温暖化ガスの排出量にも影響しないとの見解を示した。パイプラインの代替手段の鉄道などで原油を輸送した場合、温暖化ガスの排出量が逆に28~42%増えると試算した。
エネルギー安全保障や外交、経済への影響など国益に関する意見を90日間かけて関係省庁から聴取し、オバマ大統領への提言をまとめる。オバマ氏は2012年1月、環境保全が完全には保証できないとして建設を許可しなかった。このため建設計画を進めるカナダのエネルギー企業トランスカナダが、ルートを変更して新たに建設認可を申請していた。
共和党のマコネル上院院内総務は同日の声明で、パイプライン建設は多くの雇用を創出すると指摘。そのうえで「ホワイトハウスがいつまでも時間稼ぎをする理由は何もないことが確認された」と主張した。
報告書の内容はオバマ氏の判断にも影響を与えそうだ。ただ、建設の是非を巡って与党内の意見はまとまっておらず、中間選挙を前にオバマ氏が共和党の攻勢をしのげるかが焦点となりそうだ。
カナダは米国にとって最大の原油輸入元。カナダ産原油を米中西部に輸送するコストの減少も見込め、米製造業には恩恵を与えそうだ。パイプラインでの輸送費が鉄道と比べて半分程度との試算もある。
製油所が集中するテキサス州から輸出する石油製品が増えれば、原油価格の低下要因ともなる。今回の計画では流動性が低いオイルサンドを軽質油などと混ぜて輸送する。改質処理が必要だが、オイルサンドの開発に弾みがつく可能性がある。
パイプラインを通じて隣接する友好国カナダからの輸入を増やせば、米国はベネズエラなどへの依存度を落としてエネルギー安全保障を強化できる。