台湾、学生が立法院占拠 中国との貿易協定に反対
台湾と中国が昨年6月に結んだサービス貿易の自由化協定を巡り、台湾で馬英九政権に対する反発が広がっている。立法院(国会)の委員会で与党・国民党が同協定の審査通過を強行採決したことに抗議する100人以上の学生が18日夜から立法院の議場を占拠した。混乱が長引けば、中台が目指す自由貿易圏の完成の遅れなどにつながる可能性もある。
学生は台北市内の立法院のガラス扉を破って議場に突入。食い止めようとした警官隊には負傷者も出た。学生は19日も議場に居座っている。学生による立法院の占拠は初めてで、共感する学生ら1000人以上も立法院周辺に集まっている。
同協定は17日の委員会での審査を経て、4月上旬にも院会(本会議)で承認されるとみられていた。最大野党の民進党が委員会での強行採決を強く批判したことに学生が呼応。議場近くにいた大学生の徐子桓さん(21)は「民主主義に反するやり方に強く抗議する」と息巻く。
サービス貿易協定は中台が2010年に結んだ経済協力枠組み協定(ECFA)の具体化協議の1つ。医療や金融、建設などの市場を相互に開放し、参入を容易にする狙いだ。6月の締結後、双方の承認を経て早期に発効する予定だった。
ただ台湾では、「業界への説明が不十分」などとして野党や一部住民が反発。従来は必要なかった公聴会や審査手続きを経て発効することに決めた。だが3月10日に公聴会が終わっても、民進党が「中国企業に雇用を奪われる」などとして審査を妨害。業を煮やした国民党は強行採決に打って出た。
景気低迷などを受け、各種世論調査による馬政権の支持率(満足と答えた比率)は2月中旬時点で10%台前半に低迷。昨年8月には陸軍で兵役中の男性が虐待で死亡した事件に抗議し、10万人を超える学生らが総統府前で真相究明を訴えた。こうした学生の不満が爆発し、過激な行動につながった形だ。
立法院に立てこもった学生はサービス貿易協定の委員会での審査やり直しや、馬総統の謝罪を要求。現時点では21日まで居座るとしている。
騒動は中台関係にも波及しそうだ。中台当局は関税を原則撤廃する物品貿易協定などを早期に結び、今年中にECFAを完成させたい考え。だがサービス貿易協定の発効が遅れれば、シナリオが狂うのは必至だ。(台北=山下和成)