沖縄の基地のあり方にもっと目を向けよ
米軍普天間基地の移設を巡る政府と沖縄県の対立がいよいよ抜き差しならないところまで来た。残念な事態と言わざるを得ない。どうすれば折り合えるのかを国民全体でよく考えたい。
普天間基地は沖縄県宜野湾市の市街地にある。11年前、米軍のヘリコプターが大学キャンパスに墜落する事故があった。住民は常に危険と隣り合わせで暮らす。
同基地を人口が比較的少ない同県名護市辺野古に移すという政府の方針は妥当である。
他方、沖縄県の翁長雄志知事は県外移設を求め、前知事が下した移設先の埋め立て許可を取り消した。「沖縄に集中する基地負担が固定化する」との判断だ。
埋め立て許可やその取り消しが妥当かどうかは、公有水面埋立法を所管する国土交通相が判断する権限を持つ。防衛相は近く審査請求する。国交相は移設工事の続行を認めるとみられる。
その後は知事が国交相の決定への不服を裁判所に申し立てるなどの形で、法廷闘争に入ることになろう。最終決着は最高裁に委ねるしかないが、そもそも司法で争うのになじまない問題である。
一連の法手続きは公権力が個人の私権を侵害した場合の救済措置として設けられた。その仕組みのもとで政府と地方自治体が争うのは、政治の調整力のなさを露呈するものである。
米軍基地を全廃すべきだと考える沖縄県民はさほど多くない。県民の怒りの矛先は、基地が沖縄に偏りすぎているといくら言っても、全く振り向かない本土の無関心に向いている。
沖縄にある米軍基地の中には本土にあって差し支えのない施設が少なくない。だが、本土に移すとなると相当な反対運動を覚悟せざるを得ないため、米統治時代のままの体制がおおむね維持されてきた。政府は沖縄の基地負担の軽減にもっと努める必要がある。
沖縄にはどれぐらいの防衛力があればよいのか。日米両政府や与野党が基地のあり方にもっと目を向け、真剣な議論を展開すれば、沖縄県民も自分たちが置かれた立場を理解するようになるはずだ。
本土のわがままで沖縄がひどい目にあっている。県民がそう思っている限り、たとえ最高裁が名護市への移設にお墨付きを与えても摩擦はなくならない。移設を円滑に進めるのに必要なのは、本土側の真摯な取り組みである。