ガスプロム幹部、新潟県庁表敬 火力発電所巡り県内に波紋
ロシア国営のガスプロム幹部が新潟県庁を表敬訪問したのを機に、天然ガスの輸出先として同社が探るとされる火力発電所建設問題で県内に波紋が広がってきた。同社側には将来の関係強化へ布石を打つ狙いがあるとみる関係者が多いためだ。燃料高に備えた天然ガス受け入れには積極論も強く、建設が実現すればエネルギー供給の分野で県の存在感は高まる。だが事業主や発電場所、送電網の整備など乗り越えなければならない課題は多く、県は難しい対応を迫られそうだ。
会談で県側は新潟東港と直江津港の図面を提示し、港湾の概況を説明。県側の説明によると、火力発電所に絡む具体的な話は出なかったが、ガスプロム側は「新潟はインフラが整っており、重要なパートナーと見ているので、これからも連携していきたい」という趣旨を話した。
この発言の裏に電力事業参入の思惑を感じ取る専門家は少なくない。環日本海経済研究所(ERINA、新潟市)の杉本侃副所長は「ガスプロムは市場価格に左右されがちな天然ガスを売るのではなく、より安定した業績が見込める電力事業に参入したい思惑があるだろう」と分析している。
一方、県は新潟市などと連名でエネルギー戦略特区構想を政府に提案した経緯があり、エネルギー拠点の誘致に強い意欲を示す。その代表的存在といえるのが、天然ガスを海外から安価に調達するためロシア極東地域のウラジオストクなどと新潟を結ぶという「日本海横断パイプライン構想」だ。9日の県議会一般質問でも、泉田裕彦知事は「(構想が実現すれば資源調達の)コストが下がる。日ロ双方の政府や関係機関に構想の有効性などをアピールしていきたい」と語った。
折しも柏崎刈羽原子力発電所の再稼働問題が曲折を続けているという事情もある。ガスプロムが天然ガスの安定的な輸出先として日本に期待する火力発電所の建設は電力供給の安定化に果たす役割も大きいとみられる。
ただ、火力発電所建設は必ずしも強い支持を受けていないのが実情。ある大手商社関係者は「誰が発電所をつくり、資金を提供するのかが問題になる」と指摘する。
国内の電力会社をみると、東北電力は宮城県に発電所と燃料基地を計画中で、当面は電力供給に余裕がある。福島第1原子力発電所の事故で電力供給量の確保に腐心する東京電力も目下、茨城県で火力発電所を計画しており、新たな火力発電所に関与する余裕があるかどうかは読みにくいのが実情。電力会社関係者から「送電網の整備費を考慮すれば、いくら安価にガスを調達しても落札できる金額にはならないのではないか」という声も出ている。
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