筑波大、ミトコンドリア病予防技術を開発
母から子に遺伝し、脳や筋肉などに異常が現れるミトコンドリア病の発症を防ぐ技術を筑波大の林純一教授の研究グループが開発した。体外受精して3日ほどたった初期胚の遺伝子を診断し、ミトコンドリアという細胞内の小器官にあるDNAで突然変異を起こした割合が低ければ、母親の体に戻す。成果は4日の米国科学アカデミー紀要電子版に掲載される。
ミトコンドリアは1つの細胞に数百個あり、エネルギーを生み出す役目を持つ。DNAに突然変異を起こしたミトコンドリアの割合が一定以上になると、脳卒中のような症状や知能障害、筋力の低下などを引き起こす。欧州では10万人に9~16人が発症するとの報告があり、日本では医療費が公費負担となる難病に指定されている。
研究グループは突然変異を起こしたDNAを75%以上持つマウスはミトコンドリア病を発症することを突き止めた。ヒトの場合、受精卵が成長した後、ミトコンドリアのDNAを調べ、突然変異が一定の割合以下のときに母親の子宮に戻せば発症を予防できるという。
英国では現在、ミトコンドリア病の予防として別の女性から提供された核を取り除いた卵子に、母親の核だけを移植する方法が検討されているが、倫理的な問題がある。筑波大の方法はこうした問題を回避できる可能性がある。