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国の借金1000兆円に 消費税何%にしたら減らせる?

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 「日本の国の借金が1千兆円になったという記事を読みました。消費税が上がれば減らせるのですか」と来春就職を控えた大学生が事務所で疑問を投げかけた。「確かに不安ですね。調べてみましょう」と探偵、松田章司が街へ飛び出した。

消費増税8%では困難

章司が財務省のデータを調べると、今年6月末時点の国の借金は1千兆円を超えていた。単純計算で国民1人当たり約792万円の借金を抱えていることになる。

「なぜそんなに増えたんだろう」。章司が首をかしげると、みずほ証券チーフファイナンシャルアナリストの柴崎健さん(46)が声をかけた。「バブル崩壊後の長期にわたる景気低迷で税収が減る一方で、高齢化で社会保障費が増え続けたのが原因です」

国の支出は年間約90兆円で、この20年で約20兆円増えた。中でも社会保障費の増加が著しい。お年寄りが増えたため、年金や医療に使うお金を働く世代が納める保険料で賄えなくなり、国の予算が年30兆円程度を負担している。

これに対し、国の税収は約40兆円にとどまる。最も大きい所得税は91年の約27兆円に比べほぼ半減した。過去の消費増税の時に合わせて減税したうえ、経済の低迷で国民の収入自体が減ってしまったからだ。企業にかける法人税も、収益悪化でピーク時のほぼ半分に落ち込んだ。税収では不足する財政を借金でやり繰りするうちに、残高がどんどん積み上がったらしい。

「でも来年4月から消費税を5%から8%へと3%分も上げるのだから、これから減っていきますよね」。章司が聞くと、柴崎さんは首を振った。「今回の消費増税も、増えた税収の大半は財政赤字の穴埋めに消えます」。消費増税で税収は毎年8兆円増える見込みだが、年金の財源不足や高齢化による医療・介護費の自然増を賄うのに充てると、ほとんど残らないという。

章司が事務所に戻って中間報告すると、所長が「借金が減る条件は何だ」と宿題を出した。章司は財政に詳しい上智大学准教授の中里透(47)さんに聞くことにした。

負担と受益、国民に説明を

「まず"プライマリーバランス"を黒字化しないと減りません」と中里さん。プライマリーバランスとは「基礎的財政収支」とも呼ばれ、毎年の政策経費を、税収など「国債以外で調達したお金」でどれだけ賄えているかを示す指標だ。日本はここ数年間、毎年、約30兆円の赤字が続く。章司は「消費税3%分がおよそ8兆円だから、さらに税収を増やしたり、支出を減らしたりする必要があるのですね」と驚いた。

中里さんは「借金の残高だけでなく、国内総生産(GDP)とのバランスに注意する必要があります」と指摘した。GDPとは1年間に国内で個人や企業が稼いだ総額のこと。「同じ1千万円の借金でも、年に1億円稼ぐ人と500万円の人で重みが違いますよね」。将来、借金を返せるほど稼ぐ力があるかどうかが重要だということだ。

日本は借金がGDPの2倍と先進諸国の比率(0.6~1.5倍)に比べて突出して高い。単純比較はできないが、財政危機が起きたギリシャやイタリアをも上回る。国が借金を返す能力を投資家に疑われると、貸し手がいなくなって国の財政は破綻する。

「どうすれば比率が下がりますか」。章司が聞くと、中里さんは「GDPは経済成長率が高いほど、借金は金利が高いほど増えます。基礎的財政収支が釣り合っているなら、成長率と金利の大小関係が重要です」と答えた。つまり金利を上回る成長率を保てれば比率は下がる。ただ「成長率を高めることは重要ですが、日本の場合はまず基礎的財政収支を黒字化しないといけません。税収を増やしたり、支出を減らしたりする努力も必要です」と付け加えた。

成長率は税率や金利、国の支出などと相互に影響し合っている。このため経済学者の間でも、借金のGDP比率を下げる方法を巡っては色々な意見があるのが現状だ。

例えば、歳出削減を急ぐべきだという意見がある一方、マクロ経済が専門の大阪大学教授の小野善康さん(62)は、「増税は必要ですが、同時に歳出削減して雇用を減らしたら逆効果です」と主張する。失業者が増え、税収が落ち込む恐れがあるからだ。「増税で税収が増えた分の一部は、借金の返済ではなく新たに人を雇うのに使った方が所得が増えて税収も増えます」

次に章司は、大和総研を訪ね、「結局、何%まで消費税を上げれば借金が減っていくのですか」と聞いてみた。

主席研究員の鈴木準さん(47)は独自の試算結果を示し、「物価が上がった時に年金の水準を据え置くなどの限られた給付抑制策だけでは、2030年代に消費税を25%程度まで引き上げたとしても、税収で政策的経費を賄えません」という。「公的な皆保険や皆年金を最低限にして民間の保険やサービスの利用が広がれば、民間の伸びで成長率を維持することができ、消費税は20%程度で抑えられるかもしれません」と話す。章司は「それでも今より10%以上も上げる必要があるのですね」とため息をついた。

次に話を聞いた慶応大学教授の小林慶一郎さん(46)も「経済学者のシミュレーションでは、100年程度先まで財政を破綻させないようにするには段階的に消費税を引き上げ、ピーク時には30%以上が必要だとの研究もある」と話す。「僕が生きている間は30%か」と章司が嘆くと、小林さんは「増税による税収は国債の利払いなどで国民に還元される。国が破綻するよりは国民が負担するコストが小さいと捉えられるのではないでしょうか」と付け加えた。

「社会保障を削って、しかも消費税を上げるなんて、国民の納得を得られるかな」。そこで章司は海外の社会保障政策に詳しい日本総合研究所調査部長の山田久さん(50)に問い合わせた。「北欧では、消費税を上げる際に女性や若者など幅広い国民がメリットを実感できるように、保育政策などを充実させてきました」と山田さん。「負担と受益を対応させて説明していくことが国民の納得や政治的合意には必要ですね」

章司が事務所で報告を終えると、所長は「探偵のみんなには調査費のムダを減らして事務所の赤字削減に貢献してもらおう」と力説。すると横で聞いていた所長夫人の円子が「まずは所長の成長戦略を示してもらわないとね」と厳しい一言。

(松林薫、山川公生、井上円佳)

[日経プラスワン2013年11月9日付]

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