自衛艦と衝突、釣り船の2人意識不明 広島沖
15日午前8時ごろ、広島県大竹市の阿多田島沖の瀬戸内海で、海上自衛隊の輸送艦「おおすみ」と釣り船が衝突、釣り船が転覆した。釣り船に乗っていた男性4人が投げ出され、全員救助されたものの、2人が意識不明の重体。残る2人は無事だという。海上保安庁などが事故の状況や原因を調べている。
第6管区海上保安本部によると、重体になっているのは船長の高森昶さん(67)と釣り仲間の大竹宏治さん(66)。山口県岩国市内の病院で治療を受けている。救助された男性は「おおすみの左舷中央部に衝突したようだ」と話し、広島海上保安部はおおすみの船体に衝突の跡のようなものを確認した。
おおすみは定期検査のため広島県呉市の海自呉基地を出港し、岡山県玉野市にある三井造船の造船所に向かう途中だった。防衛省によると事故当時、現場海域の視界は良好で波も穏やかだったという。運輸安全委員会は船舶事故調査官4人を現地に派遣した。
小野寺五典防衛相は15日午前、緊急に記者会見し「自衛隊の責任者として誠に遺憾だ。乗員の一刻も早い回復をお祈りしている」と表明。海保の捜査に全面的に協力するとともに現地で若宮健嗣防衛政務官を対応にあてる考えを示した。
事故発生は8時6分に防衛省に連絡があり、同20分ごろに防衛相や菅義偉官房長官に伝えられた。直ちに防衛省が事故対策会議、海自は事故調査委員会を設け、首相官邸も危機管理センターに官邸対策室を設置した。
中東・アフリカ歴訪から政府専用機で帰国途中だった安倍晋三首相にも電話で伝えられ、首相は関係省庁に(1)迅速な救助活動(2)周辺船舶の安全確保(3)国民への迅速な情報提供――を指示した。
海自艦船と民間船舶の衝突事故では、1988年に神奈川県の横須賀沖で潜水艦「なだしお」と釣り船が衝突し30人が死亡、当時の瓦力防衛庁長官が引責辞任した。2008年には房総半島沖でイージス艦「あたご」と漁船が衝突し、漁船の親子2人が犠牲になった。