物価・雇用改善、一段と 消費増税前に景気堅調
景気の回復を受け、物価と雇用が一段と改善している。27日発表の11月の経済指標で、消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く指数が前年同月に比べて1.2%上がり、5年1カ月ぶりの伸び率だった。11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.00倍となり、求職数に見合う求人があることを示す1倍台を6年1カ月ぶりに回復した。来春の消費増税を前に景気は堅調に回復しているが、設備投資や輸出の先行きなどに不透明な面もある。
消費者物価 5年ぶり伸び率
11月の消費者物価指数は、食料とエネルギーを除く指数も前年同月比0.6%上がり、1998年8月以来、15年3カ月ぶりの伸び率だった。値下がりが続いてきた耐久財のうちテレビやパソコンなどが値上がりに転じている。
11月の指数を品目別に見ると、電気代が前年同月比8.2%、傷害保険料が同10.1%、外国パック旅行が14.6%上昇した。冷蔵庫などの家庭用耐久財は0.9%の下落と前月からマイナス幅が2ポイント縮小。テレビなど教養娯楽用耐久財は1.7%上昇と前月から2.6ポイント上昇し、プラスに転じた。
全国の動きに先行する東京都区部の12月中旬速報値は生鮮食品を除く指数が前年同月比0.7%上昇し、8カ月連続で前年同月を上回った。13年の平均は前年比0.1%上昇し、08年以来5年ぶりにプラスに転じた。14年1月末に発表となる全国の13年指数も5年ぶりにプラスとなる見通し。14年4月からは消費増税の影響も加わり、物価上昇は当面、続きそうだ。
政府は12月の月例経済報告で物価の判断から「デフレ」の表現を09年10月以来4年2カ月ぶりに削除し、日本経済がデフレ脱却に一段と近づいているとの認識を示している。
求人倍率 6年ぶり1倍台乗せ
雇用はリーマン・ショック以前の水準まで回復した。製造業の新規求人は前年同月比20%増と大幅に伸びた。特に自動車や電気機械では求人数が1.5倍になった。円安による輸出増に加え、消費増税前の駆け込み需要も追い風だ。
総務省が発表した11月の完全失業率(季節調整値)は3カ月連続で4.0%だった。完全失業者数は5万人減の261万人。勤務先の都合による離職は減り、新しい職場を求める自発的な離職が増えた。
就業者数は10月から23万人増えて6350万人となり、3カ月連続で前月を上回った。職探しをしていない失業者にあたる「非労働力人口」は4469万人と前月比19万人減った。景気回復で仕事が見つかるとの期待感から仕事を探し始める人が増えた。
賃金も上向いてきた。厚労省が発表した11月の毎月勤労統計調査(速報)によると、11月の現金給与総額は27万6601円となり、前年同月比0.5%増えた。景気回復に伴い、残業代が増えている。雇用形態別にみるとパート労働者の現金給与総額は0.3%減ったが、給与を労働時間で割った時給は上がっている。
鉱工業生産 駆け込み需要で3カ月連続上昇
経済産業省が発表した11月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整値)速報値は99.4と前月と比べて0.1%上昇した。上昇は3カ月連続。来春の消費増税前の駆け込み需要を見込み、軽自動車や小型乗用車の生産が好調だった。大企業を中心に聞く生産見通しも12月は前月比2.8%の上昇、来年1月は同4.6%の上昇となっている。消費増税前の駆け込み需要もあり「企業は値上げをしやすい環境」とニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は見る。
今後の焦点は設備投資と輸出の回復だ。設備投資は回復が鈍く、輸出も円安による押し上げ効果ほどは伸びていない。安倍晋三首相の靖国神社参拝が、中国や韓国との貿易に影響を与える可能性もある。バークレイズ証券の森田京平チーフエコノミストは「日中韓での外交面の緊張が輸出を下押しすれば、企業が増産を見込む先行きの生産計画が下振れする恐れがある」と指摘する。