原油・通貨・中国 国際商品低迷、3つの要因
原油や非鉄金属など国際商品の相場低迷が続いている。世界の取引所で売買される主要30商品は半年前と比べると23商品で下落した。昨年の同じ時期は逆に22商品が上昇していた。国際商品の局面は鏡に映したように反転した。読み解くキーワードは「原油安」「通貨安」「中国減速」。
原油関連、2割超の大幅安
半年間で最も値下がりしたのは天然ガスだった。4月28日時点で、ニューヨーク先物は100万BTU(英国熱量単位)2.5ドル。2014年11月初旬と比べて4割安になった。
米国のシェールオイルの増産が続き、副産物として一緒に生産される天然ガスは供給過剰になった。「2月に米国が寒波に襲われたにもかかわらず消費も例年並みにとどまった」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)と相場上昇のきっかけがなかった。
14年末にはオーストラリアのカーティス(クイーンズランド州)で新規開発案件が動きだした。今年も同国では新たな開発案件が控えており、過剰な供給は止まらない。
北海ブレント原油やニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)といった原油関連銘柄は軒並み20%以上の大幅な下落になっている。米国の原油生産量に減少の兆しがみえて、足元で相場は強含んできたが、需給が引き締まるにはまだ時間がかかりそうだ。
■通貨安で増産基調
外為市場でのドル独歩高の状況に、新興国で通貨安を背景にした生産が止まらず、相場を下げる商品も多い。
その代表銘柄がコーヒー豆。レギュラーコーヒーに使う「アラビカ種」の指標となるニューヨーク先物は現在、1ポンド140セント前後になり、半年間の下落率は原油よりも大きい27%だった。
生産国であるブラジルは最近1年間で通貨レアルが対ドルで3割下落した。昨年、不作に見舞われた生産者は通貨安と好天に恵まれた今年、増産へのアクセルを踏み込む。
同国が輸出ベースで世界シェアの4割を占める砂糖も生産意欲は強い。国際指標のニューヨーク先物は1ポンド13セント前後で6年ぶりの安値圏になった。現地の生産者団体によると、15年のサトウキビ生産量は前年を上回るとの見通し。弱基調の相場が長引きそうだ。
貴金属のプラチナ(白金)も砂糖に構図が似ている。世界供給の7割を生産する南アフリカ共和国は昨年、鉱山のストライキで生産が停滞して鉱山会社の収益が減少した。ドル建て相場が低迷しても、自国通貨のランド安を好機に鉱山会社は高水準の生産を維持する。
非鉄金属は中国減速も
非鉄金属で最も下落したのは、はんだなどに使うすず。足元で指標となるロンドン金属取引所(LME)の先物価格は1トン1万5700ドル前後で、半年前から16%下落した。特に主用途の家電向け需要が中国で弱く、相場が反転する足がかりがみえない。
ニッケルは中国需要の鈍化に通貨安のあおりも重なった。主要生産国であるロシアのルーブル安を背景にした供給増が意識されて売られた。3月末には1トン1万2800ドル前後まで下がり約6年ぶりの安値圏に沈んだ。
需要面でも中国で住宅価格が下落して部材に使われるステンレスの引き合いが後退、原料になるニッケルの相場に波及した。鉱物資源全般が値下がりして「鉱山用建機向けのステンレス需要も弱くなっている」(野村証券の大越龍文シニアエコノミスト)という。
上昇した銘柄は・・・
相場を上げたのは7商品だった。最も上昇したのは東京商品取引所に上場されるシート状の天然ゴムだった。指標となる「RSS3号」は現在、1キロ216円前後と8%前後の伸びになった。主産地であるタイの政府がゴム農家の経営を支えるため、14年12月から買い上げを実施した影響で、強基調の展開になった。
上昇率2位の綿花は昨秋に約5年ぶりの安値圏まで下落した反動に加え、競合するポリエステル繊維の原料が下げ止まったことでファンドによる買い戻しの動きが強かった。(筒井恒)
関連企業・業界