石炭火力、CO2減らし復権へ 高効率発電に挑む
石炭火力発電所が国内で再び脚光を浴びるような場面が、近い将来に実現するかもしれない。
石炭は埋蔵量が天然ガスや石油と比べて多く、今後100年以上にわたって採掘できるとの推測もある。石油のように埋蔵場所が中東など一部地域に集中しているわけではないことも利点。価格も比較的安定している。これらの点では火力発電の燃料として、石炭の評価は高い。
国内では新設のハードル高く

問題は二酸化炭素(CO2)の排出量が多いことだ。既存の一般的な石炭火力発電所では石油火力よりもCO2排出量が約3割多く、天然ガス火力と比べれば6割増に達するとされている。このことが問題視され、特に国内では新設へのハードルは低くない。
そのため発電設備を手掛ける重電メーカー各社の間では、日本向け事業は燃焼効率が高い液化天然ガス(LNG)火力で使う機器を重視し、石炭火力関連の製品開発の優先順位は必ずしも高くなかった。
変化の兆しはある。三菱重工業の内田聡・火力発電システム事業部副事業部長は「燃焼温度がセ氏600度を超えるような高効率の発電システムは今後有望だ」と語る。現在は窒素酸化物(NOx)の排出が少ないバーナーなどの開発を進めており、実用化の時期を探っている段階だ。
さらにはIGCC(石炭ガス化複合発電)も視野に入れる。IGCCは石炭をガス化し、ガスタービン・コンバインドサイクル発電(GTCC)と組み合わせるシステムを指し、従来の一般的な石炭火力と比べて発電効率が最大で約2割高まるとされている。
発電効率を向上できれば、それと同率のCO2削減が見込める。灰をスラグ化するために容積が半分以下となり、灰捨て場の面積を小さくできる利点もある。2020年をめどに発電所を稼働させるスケジュールを念頭に、国内外で受注活動に力を入れている。
同社の今後の課題は燃料となる炭種の拡大。世界的にみれば発電燃料として良質な石炭は埋蔵量全体の4割強にとどまり、6割弱は褐炭など燃焼効率が良くないものと考えられている。海外受注を増やすためには、中低品質の石炭でも十分な発電効率を維持するための技術が欠かせない。
日本発の技術、世界で主流に?
東芝は燃焼温度が高い火力発電設備でローターやノズルなどに使う素材の開発に力を注ぐ。セ氏700度に耐える独自のニッケル合金を開発しており、今後は高温高圧の過酷な環境で長期間にわたる利用に耐えられるかなどを実証する試験を進めていく。
実用化の時期や、どこの発電所に導入するかなど具体的な計画は検討中だが、20年ごろの稼働に向けて開発を急ぐ。
日本では原子力発電所の停止が長期化し、再稼働に向けた地元との調整も難航している。原発の新設を見込める状況ではなく、火力発電所の重要性が高まっている。
これらの状況を反映し、電力の安定供給とCO2排出抑制を両立できる石炭火力発電に関する技術開発は、今後一段と加速しそうだ。日本発の技術が世界で主流になることもあり得る。
(産業部 村松進)