米FOMC声明全文
【ワシントン=岩本昌子】10月30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明は次の通り。
前回9月のFOMC会合後に得た情報を踏まえると、全般的に米経済活動は穏やかなペースで拡大を続けている。労働情勢を示す指数はさらにいくらかの改善を示しているが、失業率は依然として高い水準にある。
入手可能な情報からみて、家計支出や民間設備投資はさらに進んだが、住宅部門の改善は最近数カ月でやや減速した。政府の財政政策が経済成長を抑制している。エネルギー価格の変動以外で物価上昇はFOMCの長期目標を下回る水準で推移している。長期インフレ期待は安定した状態を維持している。
法律で定められた使命を達成するため、FOMCは雇用の最大化と物価安定の促進に努める。FOMCは、適切な金融緩和政策によって経済成長は穏やかなペースで進み、失業率はFOMCの使命と整合的な水準に段階的に低下していくと予想している。
景気見通しと労働情勢の下振れリスクは全体として昨秋以降弱まってきているとみている。物価上昇率が目標の2%を下回る水準にあることが米経済活動に悪影響を及ぼす可能性についてFOMCは認識しているが、物価上昇は中期的に目標に向かっていくと予測している。
ここ1年の政府財政引き締めの程度を考慮に入れると、資産購入政策を開始した時以降、米経済と労働市場に改善がみられ、幅広い経済の底堅さも強まってきている。だが、FOMCは資産購入のペースを調整する前に、米経済と労働市場の改善が持続的なものだと示す証拠がさらに示されるのを待つことに決めた。 その結果、1カ月あたり400億ドル(約3兆9000億円)のペースで住宅ローン担保証券を追加購入し、1カ月あたり450億ドルのペースで長期米国債の購入を継続することを決めた。米機関債と政府保証付住宅ローン担保証券の償還元本を政府保証付住宅ローン担保証券に再投資するとともに、保有国債の償還金を入札で再投資する既存の政策も維持する。これらの政策を併せて実施することで、長期金利を押し下げて住宅ローン市場を支援し、幅広い金融市場の状態をより緩和状態にするのに寄与する。その結果、より強い景気回復を促進し、インフレが時間とともに確実にFOMCの使命と最も整合的な水準になるのを助けるはずだ。
FOMCは今後数カ月に入ってくる経済や金融情勢に関する情報を注意深くみていく。物価を安定させつつ労働市場の見通しが十分に改善するまで、長期米国債及び住宅ローン担保証券の購入を継続し、必要に応じてその他の金融政策を実施する。
資産購入のペースを縮小する時期を決定するにあたっては、労働市場が改善し、物価上昇が長期目標に向かい動くというFOMCの予測を引き続き裏付けるような情報かどうかを今後の会合で評価する。資産購入の今後の道筋はあらかじめ設定されてはいない。購入ペースに関する決定は、今後もFOMCの経済見通しや資産購入政策で起こりうる利点や損失の評価次第である。
雇用の最大化と物価の安定に向けて続いている改善状態を後押しするためには、資産購入政策が終了し、経済回復が強まった後も相当の期間は極めて緩和的な金融政策を維持するのが適当であることを、FOMCは30日改めて確認した。
具体的には、フェデラルファンド(FF)の金利の誘導目標の範囲を0.0~0.25%に維持すると決定した。少なくとも失業率が6.5%以上となり、1~2年先の物価上昇見通しがFOMCの長期目標の2%を最大0.5%ポイント上回る水準にとどまり、長期インフレ期待が引き続きよく抑えられている限りは異例に低い水準のFF金利が正当化される可能性が高いと現時点で予想している。
極めて緩和的な金融政策を維持する期間を決めるにあたっては、労働市場の情勢を示す他の指標や、インフレ圧力・インフレ期待の指標、金融市場の発達状態を含めたその他の情報も考慮する。FOMCが金融引き締めを始めると決定したときは雇用の最大化と物価上昇率2%という2つの長期目標と一致するバランスのとれた方策を実施していく。
30日の決定はバーナンキ議長及びダドリー副議長を含む9人の委員の賛成による。反対票を投じたのはカンザスシティー連銀のジョージ総裁。反対の理由は、極めて緩和された金融政策の継続は将来、経済・金融の非均衡を起こす危険性を高め、時間と共に長期物価上昇期待の高まりを引き起こしかねないと懸念しているためだ。