G7は成長持続へ構造改革を忘れるな
中国経済の行方など世界経済の先行き不透明感が残るなか、日米欧という先進国は成長の持続に向けて結束を保たねばならない。
主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議が、各国の状況に応じて金融政策、財政政策、構造改革をバランスよく用いる方針を再確認したのは当然だ。
中国経済を発端とする金融市場の混乱が続いていた2月時点と比べると、市場は落ち着きを取り戻しつつある。原油価格も底入れの兆しがあり、世界経済の下振れ懸念はひとまず薄らいだ。
それでも6月の欧州連合(EU)離脱の是非を問う英国の国民投票の結果によっては、市場が再び混乱するリスクはある。英国を中心に非常時の対応に万全を期すとともに、日米なども必要に応じて支援する備えをしてほしい。
経済協力開発機構(OECD)によれば、2016年の世界経済の成長率は前年と同じ3%にとどまる見通しだ。「若年層、高齢者、投資家にとって3%成長は不十分」(OECDのキャサリン・マン氏)というのは事実だろう。
中国経済は減速し、ブラジルやロシアなどではマイナス成長が続きそうだ。先進国は世界経済のけん引役を求められているが、今回の会議でも具体策で各国の溝が埋まったとはいえない。
為替政策をめぐる日米のさや当ては続く。財政政策ではドイツや英国が追加策に慎重で、積極的な日本との違いは明らかだ。
財政政策は予算の「規模」だけが重要なわけではない。インフラや研究開発投資などに重点的に振り向け、予算の「質」を高める余地は各国とも大きい。G7は引き続き政策協調を探ってほしい。
G7は高齢化による潜在成長率の低下という共通の課題に直面している。金融・財政政策で短期的に景気を下支えするのと同時に、長い目でみて経済の体質を抜本的に強化するための構造改革を忘れてはならない。
米国は環太平洋経済連携協定(TPP)の承認に動くときだ。日本もTPP承認と働き方改革が急務だ。ユーロ圏は銀行の不良債権処理を加速し、民間資金を使ったインフラ整備も進めてほしい。
26~27日にいよいよ主要国首脳会議(サミット)が開かれる。日本の消費増税の扱いと絡んで、財政出動ばかりに焦点があたるようでは困る。議長国日本はもっと構造改革に光をあてるべきだ。