[FT]中国、「アフリカ資源ビジネス」のキーマン拘束
香港に本拠を構え、中国のアフリカ進出の中核を担う秘密めいたビジネスネットワークの先行きが一気に不透明になった。7つの名前を持ち、中国秘密情報機関と関係がある表看板の大物が共産党の調査に巻き込まれたと報道されたことによる。
中国の雑誌「財新」の報道と事情に通じたある人物によると、メガネをかけ、サム・パの名前で最もよく知られるこの大物は、10月8日に北京のホテルで身柄を拘束された。同氏は数十億ドル単位の資源・インフラ関連取引を求め、ジンバブエや北朝鮮の独裁者たちと関係を築いてきた。普段彼が使っている電話番号にかけても、つかまらなかった。
シノペック元会長の調査と関係か
パ氏が拘束されたのは、中国の国営メディアが、福建省長で国有石油大手の中国石油化工集団(シノペック・グループ)の元会長である蘇樹林氏が「重大な規律違反の容疑」で調査を受けていると発表した翌日のことだ。
蘇氏は習近平国家主席の反腐敗運動の最新の犠牲者となった。財新によると、パ氏と蘇氏の調査は関係している。2人は2008年に北京で開かれた会議で、アンゴラの石油省最高幹部とともに写真に写っている。
シノペックは、香港本部の住所にちなんで金鐘道集団(クイーンズウェー・グループ)として知られるパ氏のビジネスネットワークの主要パートナーだった。14日、この住所で働くある従業員は、パ氏の拘束について何も知らないと語った。
本紙(英フィナンシャル・タイムズ)は14年の調査で、アフリカにおけるパ氏の取引を検証した。今年の報道では、北朝鮮企業とつながっている可能性のある金鐘道集団の取引関係について検証している。
アンゴラ沖油田探査の権益で脚光
シノペックは04年、それまで無名だった安中石油(チャイナ・ソナンゴル)という会社と組んで、アンゴラ沖の油田探査の権益を取得した。同社の出資者は、アンゴラの国有石油企業と金鐘道の持ち株会社だった。本紙が昨年明らかにしたように、中国の秘密情報機関と協力しながらアフリカで人脈を築いたパ氏が、アフリカの資源を求める中国の活動の第一線に躍り出るきっかけとなったのは、この取引だった。
その他の取引には、ギニアの軍事政権との間で09年に結んだ、資源と引き換えにインフラを構築する数十億ドル規模の協定や、昨年パ氏が米国の制裁下に置かれる原因となったジンバブエのダイヤモンド事業などがある。英BPが運営するアンゴラの石油プロジェクトもある。ここは日量18万バレルの原油を生産している。
パ氏は以前も立場が危うく見えたことがあり、特に07年の中国の政治的混乱期にはそれが顕著だったが、これまでは常に立ち直ってきた。
チャイナ・ソナンゴルのシンガポール事業の弁護士、ジー・キン・ウィー氏は14日、同社は最近、パ氏とは進行中のプロジェクトを手掛けていないと語った。
「彼が拘束されたという中国のメディア報道を見ている。何が起きているのか知るために連絡を取ろうとしたが、つかまらなかった」。ジー氏はメールでこう語り、「会社の契約上の義務と、義務を履行する会社の責任は、特定の人物に何が起きるかに左右されない」と付け加えた。
会社側は、パ氏は単にアドバイザーを務めているだけだと強調した。金鐘道集団の会社資料には、同氏の名前は一つも掲載されていない。代わりに、大半の資料は、パ氏の主なビジネスパートナーの役目を果たす2人の中国人女性のどちらか、あるいは両方の名前を挙げている。
だが、金鐘道と事業を行っている複数の外国政府は公に、パ氏を金鐘道のグループ企業の上級役員と表現しており、同氏は何度も、これら企業を代表して写真に写っている。
金鐘道集団に関する09年の米議会報告と、今年の第2次調査報告の著者の1人であるJ・R・メイリー氏は、金鐘道の「壮大な企業帝国は引き続き、サム・パと、北京や他国の首都での彼の人脈に依存している」と述べた。
メイリー氏はさらに、こう語った。「現在の形の金鐘道集団が彼抜きで存続できるとは思えない。だが、たとえ金鐘道が破綻したとしても、間もなく別の略奪的な投資家が現れ、破綻後の空白を埋めるだろう」
By Tom Burgis in London, Jamil Anderlini and Lucy Hornby in Beijing
(2015年10月15日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
(翻訳協力 JBpress)
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