COP21、先進国と途上国の駆け引き続く 削減目標でも対立
【パリ=竹内康雄】先進国と途上国には「途上国への資金支援」と「温暖化を引き起こした先進国の責任」を巡る溝がある。先進国が途上国に大きく譲歩することになれば日本にとって不利な協定となる可能性もある。
事務レベルの作業部会は5日、新たな枠組み原案をまとめた。原案は48ページ。最終的にまとめるには「20ページ前後」(ファビウス仏外相)まで削り込む必要があり、閣僚が詰めるべき点は多い。
交渉の焦点は、先進国から途上国への資金支援だ。途上国は20年以降の支援額を明示することも要求している。一方で先進国は、将来の財政政策を縛りかねないと具体額を示すのには慎重だ。
財政負担を軽くするため、先進国は中国など資金力のある新興国を「支援する側」に取り込む戦略を描く。習近平国家主席は4日、滞在先の南アフリカで、アフリカに今後3年で600億ドルを援助すると表明した。20年以降、新興国が拠出するこうした支援を組み込めば途上国への支援額を増やすのはたやすい。
一方でインドなど新興国は、先進国と途上国の定義の変更につながる動きを警戒している。根拠となっているのは、気候変動枠組み条約で規定された「先進国」と「途上国」の区分だ。
条約上の「途上国」には新興国の中国やインドからアフリカなどの後発発展途上国まで経済発展の度合いが異なる国が含まれ、先進国に比べ責任は軽い。途上国としての「既得権」を崩しかねない動きに、新興国は拒否反応を示す。中国政府代表団の蘇偉代表は5日、「歴史的な責任がある先進国が資金や技術を支援する必要があるのは明らかだ」と強調した。
「先進国」と「途上国」の対立は、温暖化ガスの排出削減目標を巡る議論にも持ち込まれている。途上国は経済成長に配慮し先進国より緩い目標を容認するよう求める。
目標が到達したかどうかを検証する方法でも、先進国は第三者機関の審査を受ける一方、途上国は自主報告だけでよいとする案が議論されている。ただ様々な産業分野で中国勢との競争にさらされる日本は、先進国と途上国の削減義務に大きな差が生じれば不利になり容認できないとの立場だ。