ホンダ、燃料電池車を発売 広さと走りでトヨタに対抗
ホンダは10日、新型燃料電池車(FCV)を発売した。トヨタ自動車が量産で先行したが、発電装置などを小型にしてより広い室内空間を確保。モーター出力は世界最大級で、広さと走りでトヨタ超えを目指す。市販しているのは世界でこの2社しかなく日本勢が先行しているが、燃料インフラ整備や高価格など普及のハードルもまだ多い。
FCVは燃料の水素と酸素を反応させて発電し、モーターで走行する。走行中に二酸化炭素(CO2)を排出しない。ホンダの新型車は「クラリティフューエルセル」。清水潔・開発責任者は発売がトヨタのFCV「ミライ」よりも1年以上遅いことについて「先進的な魅力を高めていたからで、技術的な後れはない」と強調。トヨタへの対抗意識をのぞかせた。
自信の背景には独自の技術がある。発電装置を従来より33%小さくし、かさばっていた駆動装置をセダン型FCVで初めて、床下ではなくボンネットの中に置けるようにした。これによって室内を広くできた。ミライは4人乗りなのに対し、5人乗りでゴルフバッグを3つ積める。
一方、モーターの最高出力は130キロワットと、FCVでは世界トップクラス。八郷隆弘社長は「異次元の走りで普及を進めたい」と述べ、走りへのこだわりも強調した。
日本でリース販売を始め、2016年度は自治体や企業向けに200台程度を生産する。16年末までに欧米でも発売する。ただ当面の生産規模は限定的で、20年の販売目標について八郷社長は「まずは年数万台を目指す」と述べるにとどめた。
今後、普及させる上で壁になるのが1台766万円という価格だ。ミライより約40万円高く、国からの1台200万円強の補助金を使っても、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)など他のエコカーを大きく上回る。ホンダは25年にFCVの価格をHV並みにすることを目指している。提携している米ゼネラル・モーターズ(GM)と発電装置などの共同生産を検討し、量産効果を高めることで実現する考えだが、簡単ではない。
さらに大きな課題が水素インフラ整備の遅れだ。欧米勢は価格が安く充電インフラを整備しやすいEVへシフトする動きも目立つ。ホンダ幹部は「FCVの普及には多くのメーカーが参入したほうがいい。特許を使いたいとの要請があれば拒まない」と話す。トヨタと競いつつも普及へ向けた環境整備では手を組むことも必要になりそうだ。