スペースX、人工衛星使った無線通信に参入 4000基打ち上げ
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米宇宙開発ベンチャー、スペースXが人工衛星を使った無線通信サービスに参入する。約4000基の超小型衛星を低軌道に打ち上げ、地球規模の高速通信網をつくる。同社は衛星の打ち上げ費用が従来の100分の1のロケット開発を進めている。圧倒的な低コストを武器に、通信コストも引き下げをめざす。
通信網整備の実験許可を5月末、米政府に申請した。来年にも実験に着手する。十分な帯域の確保や安全保障上の懸念解消のため、各国政府や軍事機関などとの調整にも乗り出す。
計画しているのは、約4000の低軌道衛星を連携させ、世界をカバーする無線通信網の構築だ。携帯電話会社など通信会社と契約し、インフラを提供する方式が有力だ。
通信会社はスペースXと契約すれば、大きな投資なしでサービス地域を広げることができる。山間地や海上、航空機内や、地上の通信インフラが未整備の新興国などでも天候に左右されない、安定した通信環境を提供できるようになる。
衛星通信サービスはこれまでもあるが、人工衛星を多数打ち上げるのに膨大なコストがかかり、地上の通信網に太刀打ちできなかった。だが、従来の100分の1の費用でロケットを打ち上げる技術が確立できれば、地上の通信と比べたコスト競争力は格段に高まると同社はみている。
スペースXは5月、米で軍事用の衛星などの打ち上げ入札に参加できる認可を得た。1月には米グーグルなどから10億ドル(約1220億円)の資金を調達していた。
英ヴァージングループと米半導体大手クアルコムが出資する米ワンウェブも同様の計画を掲げている。700程度の超小型の通信衛星を打ち上げる見通し。国際電気通信連合から通信・放送の許可も得ている。日本では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)なども技術開発を進めており、衛星通信が再び脚光を浴びている。
スペースXは米シリコンバレーの電気自動車(EV)ベンチャー、テスラ・モーターズのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が創業した。マスク氏は将来の火星移住を目標に掲げ、ロケットや宇宙船の開発に取り組んでいる。
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