超小型車普及へ発進、埼玉や奈良で貸し出し 用途探る
軽自動車よりも小回りが利き、近場の移動に適した「超小型車」の普及に向けた動きが各地で進んでいる。1、2人乗りの環境への負荷が小さい電気自動車で、地方での生活の足や観光地周遊、行政担当者の公務と、地域の特性に合わせた使い方が模索されている。
超小型車の運転には普通免許が必要。2人乗りは運輸局の許可を得れば決められた地域で公道を走ることができ、安全基準などの検討も進められている。
昨年11月30日、埼玉県上里町役場庁舎前に5台の超小型車がずらりと並んだ。それぞれに住民が乗り込み、緊張気味にハンドルを握ると、車は静かに道路へと走っていった。
同町でこの日から始まった実証実験。約3カ月間、住民に貸し出して買い物などに使ってもらい、意見を聞く。町では公共交通機関が少ない上に高齢化も進んでおり、新たな移動手段を生活の利便性向上につなげたい考えだ。
貸し出す超小型車は2人乗りで、8時間充電すれば約60キロ走行可能。燃料費に当たるコストはガソリン車に比べ約5分の1だ。運転した松本勝房さん(73)は「思っていたよりも乗りやすい」と満足げだった。
歴史遺産が点在する奈良県の明日香村などでつくる協議会は2014年から、観光客向けにレンタカーサービスを展開。昔ながらの町並みが残る中山間地で、狭く高低差の多い道を、効率よく回ってもらうのが目的だ。
宮城県美里町は、健康福祉センターの職員が、高齢者や子育て世帯を訪問する際などの公用車として活用。維持費の安さも考慮して導入を決めたという。
国土交通省によると、超小型車の導入に向けた補助金事業は15年9月までに全国で約40件実施された。同省は、各事業を振り返るシンポジウムを今春開催する予定で、担当者は「地域に応じて多様な使い方が見込める。定着に向け議論を深めたい」としている。〔共同〕