人のiPSで脊椎損傷改善 慶大、マウス移植実験成功
慶応義塾大学の岡野栄之教授と中村雅也教授らは18日、人間のiPS細胞から作った神経のもとになる細胞を脊髄を損傷したマウスに移植し、症状を改善させることに成功したと発表した。マウスは後ろ脚で体重を支えて歩いた。交通事故などで脊髄を損傷した人の治療に使えるとみており、2~3年後をメドに臨床応用を目指す。
神経細胞には、信号を伝えるニューロン(神経細胞)など3種類の細胞がある。研究グループは人のiPS細胞から神経幹細胞やオリゴデンドロサイト前駆細胞など3種類の神経細胞に育つ細胞を作り、脊髄を傷つけた5匹のマウスに移植した。
3カ月後に移植した細胞を調べたところ、信号伝達を速める働きがある髄鞘(ずいしょう)という組織が再生していたほか、ニューロンが神経回路を作っていた。神経の成長を促す物質も分泌されていた。
後ろ脚の動きも調べたところ、細胞を移植したマウスは体重を支えて歩けるようになった。移植しなかったマウスは後ろ脚を引きずっていた。
これまでに神経幹細胞を移植する研究も成果を出しているが、ほとんどがニューロンになっていた。新しい方法は3種類の神経細胞がバランスよく育つことで、神経の再生がより進みやすくなったとみている。