最低限の水準満たした政府のCO2削減案
政府は二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出量を2030年までに13年比で26%減らす目標案を公表した。
26%は地球温暖化の抑止に向けた日本の国際貢献という側面では必ずしも十分とはいえない。しかし東日本大震災後の国内情勢を踏まえ、諸外国に比べ見劣りしない最低限の水準は満たした。
全世界の温暖化ガス排出に占める日本の割合は4%を切る。米国と中国を合わせて4割を超える。日本が仮に数ポイントの目標上積みを決めても温暖化の進行を抑える実効性は小さい。より重い責務を負うべきは米中だ。
ただそうは言っても、日本は世界3位の経済大国であり、温暖化ガス排出でも5位だ。相応の責任があることに変わりはない。
国民1人当たりの温暖化ガス排出量で日本は12年に10.5トン。ドイツ(11.3トン)より少ないが、英国(9.3トン)やフランス(7.8トン)より多い。かつては先進国の優等生だったが、エネルギー効率の改善が足踏みしている。
温暖化対策を通じてもう一段の改善に努めることは、エネルギー供給の多くを海外に頼る日本の利益にもかない、挑戦に値する。
政府案は国内エネルギー消費を13%減らす。国内消費の75%は家庭や工場、自動車など非電力部門の化石燃料使用による。1970年代の石油危機後と同程度の厳しい省エネに取り組む必要がある。
経済産業省の有識者会議のまとめでは、古い工場設備やオフィスの改修などで省エネの余地はある。経済合理性のある省エネ対策が資金調達力や情報の不足から実現しない「省エネの壁」の克服が大きな政策課題だ。
電力部門では化石燃料に頼らない電源確保が大事だ。再生可能エネルギーの拡充と原発の再稼働を着実に進めなければならない。
温暖化対策は経済成長との両立が大事で、省エネが縮み指向になってはいけない。米国で毎年公表される環境・エネルギー分野の新興企業100社のリストに日本企業は1社も入っていない。中国やインドは名を連ねる。電力自由化を通じて省エネビジネスなどで成長する新産業の育成を促したい。
今回の目標を実現しようとすれば、国民や企業が少なからずリスクとコストを負う。今後、目標を正式に決めて具体的な国内対策をたてるにあたり、国民的な議論をもう一段、深めるべきだろう。