GMO系、手作りアクセ売買 作家と交流へイベントも
GMOインターネット子会社のGMOペパボが提供する手作りのアクセサリーや雑貨を売買できるウェブサイト「minne(ミンネ)」が利用者の裾野を広げている。8万人の出品者を集め、1月の流通金額は前年同月の3倍の1億3700万円に達した。作家と購入者との交流を重視し、昨秋からは実際に会場を用意してのイベント開催も始まった。一点物を求める消費者ニーズをくんで成長を続けている。
「ミンネに出品したことで新たな仕事の依頼が舞い込むようになった」。都内に住むイラストレーター、いわさきゆうし氏(32)は副業としてミンネで創作物を販売し、月10万円ほどを稼ぐ。出品するのは動物のイラストをプリントした雑貨など。ミンネ内で知名度を得たことで出版社からの挿絵イラストの仕事が増えているという。
「自分の作風にサイトの世界観が合っている」といわさき氏。サイト内のメッセージ機能を通して「プードルを描いたトートバッグを作ってください」といった一般客からの個別依頼にも対応する。会話を通してオーダーメードの商品を作り込むことで、一度購入した人が特定の作家のファンになり、継続的に交流が続くことも多い。
ミンネはGMOペパボが2012年に開設したサービスだ。開始を主導したのは同社の阿部雅幸マネジャー。趣味は休日、のみの市を巡ることだという。そこに出店する手作り作家はブログで情報発信はしていても、作品をネット販売しているケースは少なかった。
「消費者の嗜好は多様化・細分化しており、手作り品のマーケットは今後も拡大が続く」と阿部マネジャーは分析。「手作り商品の売買に特化することで既存のオークションサイトなどと差異化できる」とも考えた。「全国各地の手作り品を1カ所に集められたら人が集まるのでは」との思いからミンネを立ち上げた。
サイト開設から3年。出品者数は8万人を超え、90万点の創作品が並ぶ。足元の月間訪問者数は400万人を数える。
出品者の居住エリアを見ると47都道府県に散らばっており、地方にいながら全国に向けて自分の作品を発信している出品者が多いことがわかる。中には月に60万円を稼いで、ミンネ内での販売を本業にしている作家もいるという。
作家と購入者のやりとりを重視するうえで、14年9月には都内のイベントスペースで実際に作家と購入者が集まれるイベントを開催した。ミンネに登録する作家50人が出品し、来場客は1000人を超えた。実際に顔を合わせることで安心感を与えて、ネット上でのコミュニケーションも親密になる効果も引き出している。
インターネットを通じて一般消費者同士が商品を売買する、いわゆるCtoC(個人間取引)は着実に広がりをみせている。ヤフーが運営するオークションサイト「ヤフオク!」が代表格だが、LINE(東京・渋谷)もECモール事業「LINE MALL」を始めるなど、出品者も購入者も増加が続き、市場は広がっている。消費者が気軽に始められるほか、個人間取引では消費税がかからないため、昨年4月の増税後は節約の観点からも注目が集まった。
樹脂製品を造形する「3Dプリンター」なども普及しつつあり、個人の創作活動の幅は広がっている。物が売れないとメーカーが頭を抱える今、個人発の一点物を集めるミンネが消費者のニーズの多様化・細分化に応える受け皿となっている。(細川幸太郎)
[日経MJ2015年3月11日付]