株、食品株2カ月ぶり高値 上昇相場の種火消えず
日米の金融政策決定会合の結果待ちが続き、東京株式市場で日本株相場は方向感のつかみにくい展開が続いている。高く寄りついた17日の日経平均株価は、前場中ごろに息切れし、前日終値を下回った。外部環境が不透明との理由で自動車や鉄鋼株が売られるなか、静かに買い進まれているのが食品株だ。業種別東証株価指数(TOPIX)の食料品が17日、一時前日比23.94ポイント高の1797.01まで上昇。4月9日に付けた年初来高値(1803.80)が視野に入った。
2カ月前の高値更新時に買われたのは、主要企業の3月期決算発表を前に「外部環境に左右されにくい点と、配当利回りの高さに着目した買いが入った」(BNPパリバ証券の丸山俊日本株チーフストラテジスト)ことが主因。主力銘柄が物色しにくくなる中で、循環物色の矛先が食品株へ向かった面が大きい。だが、「きょうの食品株には『以前とは違う』積極的な評価の買いが入っている」と野村証券の伊藤高志エクイティ・ストラテジストは指摘する。
「以前」との違いとは何か。市場関係者が注目するのが食品メーカーの間で商品の値上げが浸透し始めたことだ。国内ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)で最大の懸念材料だった個人消費に明るい兆しが出てきたのではとの期待感が急速に高まっている。17日の株式市場では、7月14日からチョコレート10品を最大10%値上げする森永製菓が、一時6%上昇。売買高もここ数日は増加傾向にある。同様に、家庭用小麦粉などを7月1日出荷分から値上げする日清フーズ(東京・千代田)を傘下に持つ日清製粉グループ本社も3%近く上昇した。
確かに、食料品など身の回り品の価格は上昇基調にある。スーパーの店頭価格を調べた日経・東大日次物価指数の前年比伸び率(1週間平均)は8日にプラス0.78に達し、2011年10月以来およそ3年8カ月ぶりの大きさとなった。15日時点では0.56%と伸びは鈍化したが、それでも依然高水準にある。「企業の値上げが浸透し、消費者の生活感に近い物価は上昇傾向にある」(UBS証券の青木大樹シニアエコノミスト)証左だ。
消極的な理由から積極的な理由で買われ始めた食品株。森永、日清粉Gに象徴される食品株の上昇には「単に逃げ腰で資金を移しているのではなく、したたかな投資姿勢も映る」(ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジスト)。
2カ月前の業種別TOPIXの食料品の高値更新の翌日、日経平均は2万円の大台に乗せた。その後、日経平均の上昇基調は続かず、狭い範囲内でのもみ合いが続いた。今回の食品株買いが消費改善を先取りする積極的な買いだとすると、上昇相場入りのための種火は消えていないことになりそうだ。〔日経QUICKニュース(NQN) 中山桂一〕
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