[FT]危機下のカザフスタン、国有資産売却へ
カザフスタンは、ソ連から独立した1991年以降の歴史を通じて最も野心的な民営化計画に乗り出す。最大級の国営企業の株式を国際投資家に売り出して上場する計画だ。政府当局筋が3日、フィナンシャル・タイムズ紙に語った。
この動きは、ナザルバエフ大統領の現状認識と軌を一にしている。その認識では、世界は現在、多くの新興国にとって2008~09年の世界金融危機の影響をはるかに超えるおそれのある「経済混乱」に直面している。
民営化計画の対象は約60社の見込み
「我々は今、この冷え込みが長く厳しい冬に変わる前に行動しなければならない」と、ナザルバエフ氏は言う。
カザフスタンの経済は原油安と隣国のロシア、中国の経済減速で大きな打撃を受けている。
カザフスタン政府は今週、中央銀行のケリムベトフ総裁を交代させた。ケリムベトフ氏が8月に変動相場制への移行を発表して以降、通貨テンゲは3割強も下落している。
カザフスタン経済は00~11年の間に年率平均8.4%の成長を遂げたが、昨年の成長率は4.3%にとどまり、国際通貨基金(IMF)は10月、今年の成長見通しを1.5%に下方修正した。
このような状況の中、政府系ファンド「サムルク・カズィナ」のシュケエフ最高経営責任者(CEO)が3日、最も価値の高い国有資産の売却を含む民営化計画を発表した。石油・ガス企業のカズムナイガス、通信最大手のカザフテレコム、カザフスタン国有鉄道、原子力企業のカザトムプロム、電力企業のサムルクエネルギーなどが含まれる。「我々は間もなく大規模な民営化計画を開始する」と、シュケエフ氏は語った。匿名を条件に複数の政府当局者が、民営化計画には約60社が含まれる見込みだと語っている。売却価格に関する詳細は公表されていない。
カザフスタン国有鉄道のカバシェフ副社長は、発券業務や車両保有も含めて旅客輸送事業を手がけてくれる国際投資家を探していると言う。同氏は、中国から欧州へ至る「新シルクロード」上に位置することで、カザフスタンは投資家にとって魅力的だと付け加えた。
シュケエフ氏によれば、主要国営各社は最大で4年かかる可能性がある再編を終えた後、首都アスタナの証券取引所とロンドンや香港など海外の取引所で「25%以上」の株式を売り出す方針だ。
同氏は、各社の上場準備が整えば、アスタナは「国際金融センター」として金融ビジネスが英国法制に従って運営され、カザフスタンの司法制度から独立して決済が行われることになると語った。
「ドバイが我々のモデルだ」と、シュケエフ氏は付け加えた。
多国籍企業とのパートナーシップで投資
カザフスタンの産業の頂点に立つ各社の民営化への移行は、サムルク・カズィナの保有資産の売却を拡大していこうとする姿勢を示す。政府が国営企業の株式の少数をカザフスタン証券取引所に上場する「国民のためのIPO(新規株式公開)」を開始したのは12年、パイプライン運営会社カズトランスオイルの上場が皮切りで、その後はそれより小規模な資産の売却を重ねてきた。
しかし、それより大きなカズムナイガスやカザフスタン国有鉄道に外資を呼び込むとなると、政府当局者は苦労するかもしれない。両社とも国内で重い社会的義務を負っているうえに、大きな負債と投資の必要も抱えている。
シュケエフ氏は、780億ドル超の資産を保有するサムルク・カズィナはこれまで天然資源、エネルギー、インフラの各部門で唯一の投資家だったが、今後は大規模な多国籍企業を戦略的パートナーとして共に投資していく用意があると語った。
「投資家に関する我々の方針は変わりつつあり、今後は大規模な多国籍企業とのパートナーシップにおいて投資を行う。多国籍企業に株式の多数を与える準備もできている」と、シュケエフ氏は述べた。
By James Kynge & Jack Farchy
(2015年11月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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