天然ガスの安定調達へアジアは連携を
発電や都市ガスの原料に使う液化天然ガス(LNG)の価格が下がっている。平均輸入価格は5年半ぶりの安値水準だ。日本が買うLNGの価格は原油価格に連動して決まり、昨年から続く原油安によってLNGも値下がりした。
原子力発電所が再稼働すると、原発を代替してきた分のLNGはいらなくなる。化石燃料の調達コストの増大に苦しんできた日本経済は一息つける。
これに安心してはならない。天然ガス価格が米欧に比べて高いアジア固有の問題はそのまま残っている。安定調達への取り組みを止めてはならない。そのためには世界最大の消費地であるアジアの国々が連携することが重要だ。
三菱商事が韓国ガス公社などとインドネシアで進めてきたLNG生産プロジェクトが今月、出荷を始めた。欧米メジャー(国際石油資本)が入らず、日本企業が主導して開発・運営する初の事業だ。
LNG輸入量で世界1位と2位の日本と韓国が、天然ガス産出国のインドネシアと組む。アジアの生産国と消費国が安定供給の確保で協調する意義は大きい。
韓国ガスとの間では、中部電力がLNGの共同調達を始め、東京ガスも協力協定を結んだ。日本では電力需要が増大する夏場にLNGを多く使う。冬場に暖房用の需要が増える韓国との間で融通すれば、それぞれの調達量を平準化できる。こうした調達協力の輪を中国や東南アジア諸国などに広げていきたい。
取引環境を整えることも課題だ。アジアのLNG調達は電力・ガス会社が決まった生産地から一定量を長期間、輸入する契約が多い。荷揚げする港も決まっており、余ったLNGを別の需要家へ転売することもできない。
米国では需給に応じて市場で天然ガスの価格が決まる。これに対し、アジアのLNG価格は原油価格に連動して決まるため、LNGの需給バランスが反映されない。アジア独自の価格指標づくりやLNG取引市場の育成に協力して取り組まねばならない。
日本エネルギー経済研究所が窓口となり、日中韓やインドなどアジアの消費国と、米国やオーストラリアなど生産国の研究機関がLNG市場のあり方について議論を続けている。課題克服には消費国と生産国の相互理解が重要だ。今後も日本はそのけん引役を果たしていくことが求められる。