中国、仏アレバに出資 原発市場を共同開拓
【北京=阿部哲也】中国の習近平国家主席は2日、北京を訪問中のオランド仏大統領と会談し、原子力や環境分野を中心に経済協力を拡大することで合意した。仏原発大手のアレバに中国国有大手が出資し、海外の原発市場を共同開拓する。環境では中国が仏企業の最新技術を取り入れ、温暖化ガスの削減や水質改善を進める。首脳外交で多くの経済協力を取り付けた英独などと同様に、フランスも「中国頼み」を強めている。
オランド氏は2日午前(現地時間)、中国内陸部の重慶市に到着した。重慶では仏水事業大手のスエズ・エンバイロメントが出資する汚水処理施設などを見学。その後、北京に移動し、習氏との会談に臨んだ。仏電力公社(EDF)やアレバなど約40社の企業トップらも同行した。
首脳会談で合意した経済協力の柱が、原子力分野での協力拡大だ。経営再建中のアレバに対し、中国核工業集団が出資することを決めた。出資金額や出資比率は明らかになっておらず、年内に詳細を詰める。アレバを巡っては、三菱重工業がアレバ子会社への出資交渉について年明けの合意を目指しているほか、アレバ本体への出資にも前向きな姿勢を示している。
仏側は習氏が主導する「一帯一路(新シルクロード)」構想を後押しするため、中央アジアや中東などでの共同受注に向けて連携を強める狙いだ。EDFが持つ最新技術も中国企業に提供する。
環境分野でも連携を強化することで合意した。目玉が2030年に国内総生産(GDP)当たりの二酸化炭素(CO2)排出量を05年比で60~65%減らすとする中国への技術支援だ。仏側は中国に最新の排煙浄化システムやバイオ燃料の生成技術などを提供する。
フランスは11月末からパリで開く第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)の議長国だ。会議の成功には最大の温暖化ガス排出国になった中国の協力取り付けが欠かせない。中国は温暖化対策の新たな枠組み作りなどで仏側を支持する考えで、オランド氏は中国との協力拡大を成果としてアピールする。
オランド氏の訪中は2回目だ。会談で両首脳は年1回以上の相互訪問を続けることでも合意し、習氏は「中仏関係の新局面を絶えず切り開いていきたい」と持ち上げて見せた。双方の念頭にあったのは打算だ。
10月には習氏が訪問した英国で国賓として歓待を受け、原発や高速鉄道など総額400億ポンド(約7兆4千億円)に及ぶ大型の経済協力をまとめた。さらにメルケル独首相も北京を訪れ、独フランクフルトに人民元建ての金融商品を取り扱う国際取引所を開設することなどで合意した。
欧州の「ライバル国」がトップ外交で相次ぎ大きな経済協力を取り付けるなか、オランド氏も目に見える形で中国との関係強化を果たしたかった。習氏との会談では、中国が周辺国と摩擦を生んでいる海洋進出や人権問題について目立つ批判を封印したもようだ。
一方、欧州と接近する中国の狙いも明確だ。年内には人民元が国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)に採用される見通しなうえ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)も始動する。経済力を武器に、南シナ海などで鋭く対立する米国と欧州とを分断したいとの思惑が透ける。